魔法薬学教授の罰則 ページ33
「始めろ」
机に置いてあったのはふせんの貼られた教科書だった。
丸椅子に座り、ここを書き写すのかと教科書に目を落とすとAは顔を上げた。
「あ、あの」
「ページ数を増やされたくなければ、黙ってやれ」
黒い瞳に仕方無く黙ってAは羽根ペンを握り教科書の文字列を追っていく。
・
「終わりました」
羽根ペンを置いたAは一メートルを優に越す羊皮紙を差し出した。手は痛んだが平然を装ってスネイプを見上げる。
無愛想に受け取ったスネイプは片眉を上げると重々しく口を開く。
「……忘れ薬において必須材料は？」
え、と目を瞬きつつもAは答えた。忘却の川の水です。そう答えればスネイプは鼻を鳴らし再び質問を投げかけた。
「よろしい。次に忘れ薬の注意点は何だ？」
「名称の通り記憶を失うので、使用量を気をつけなければならない点です」
「……忘れ薬の調合に使わないのはカノコソウの小枝、ハッカの葉、ヤドリギの実のうちのどれだ？」
「は、ハッカの葉です」
Aは戸惑っていた。書き写した内容を教師が出題するなんて……罰則ではなくこんなの授業と同じだ。
「明日もこの時間に、以上」
スネイプはそう言うとポカンとするAを放り投げるように研究室の外に追い出す。勢いよく鼻先で閉じられた扉に呆気に取られていると、また扉が少しだけ開く。
黒い瞳が見下ろしてくる。スネイプは不機嫌そうな声色で言葉を紡いだ。
「Mr.マルフォイがどんなことを言ったかは知らんが吾輩の授業で暴れるのだけはやめろ。君は一時間大人しく座ることも出来ない馬鹿では無いだろう？」
言いたいことだけ言うとバタンと目の前で扉が閉めた。
Aは眉を吊り上げそうになったが彼は呼吸をするごとに嫌味を言わないと死ぬ病気にかかっていると繰り返しAは「おやすみなさい！」とスネイプに聞こえるように言った。
・
一方のセブルス・スネイプはAが渡してきた羊皮紙を見下ろす。彼は罰則だと言いつつ授業まがいのことをした自分を悔いていた。スネイプは最愛の面影に弱かった。
深く大きな溜め息を一つ吐くとスネイプはブラックコーヒーを口に含み考えた。
ドラコ・マルフォイとA・ヴィトグレーデ。
いがみ合う彼らは少しだけスネイプがずっと見ていた、彼の最愛と憎むべき男──あの二人に似ていた。
気の所為か、でないかなど未来のみ知ることだった。
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つき(プロフ) - あさん» そのように認めてくださって感謝します。あんな形ではありましたが別サイトに私の小説を読んでくれている人がいると知れて嬉しかったです。今後このようなことがないよう気をつけていただければと思います。これからもご愛読いただけると嬉しいです (2月8日 18時) (
レス) id: 7cdc86589a (このIDを非表示/違反報告)
あ - 先程別サイトの方を消させていただきました。勝手な無断転載をしてしまったことを深く反省しています。本当に申し訳ありません。 (2月8日 18時) (レス) @page21 id: 60a5994a82 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つき | 作成日時：2023年8月14日 9時
