summer[5] ページ5
「マサキ、いる？」
コンコン、と早くも木製のドアから無機質なノック音が部屋に響く。
返事も待たずにドアを開けると、姉さんが顔をひょっこり出して部屋を見渡した。
10年前と変わらず美しく伸びた緑の髪は、女である私にとっても心打たれるもので
見るたびに【綺麗】だと思わされてしまう。
「んー、晩ご飯かな？」
「あ...じゃあ、食べたらまた戻ってきますね！待っててください」
「わかったわかった。」
興奮の冷めやまない彼は、分かっていることを何度も釘刺すように言った。
その瞳は、天井の明かりも関係なく煌びやかで、太陽のような色合い。
見ないうちに大人びていく目元には、ほんの少し歓喜が滲んで丸くなっている。
「ちゃんとお手伝いするのよ」
「はーい！」
姉さんの一言に元気よく返すと、小さな背中はすぅっと廊下へ溶けるように消えてしまった。
その後ろ姿が遠く感じて、私は姉さんに見えないようにシーツをぎゅっと握り締める
見えてないはずの姉さんは、そっと私の頭に手を置いて撫でてくれた
「マサキ、大きくなったと思わない？」
「...男の子はすぐ成長するね。背中が大きくなって、声も大人びてきた」
「寂しい？」
分かっているかのように、それでも確認するように優しく姉さんは聞いた。
私は不意に視線を逸らす。
ちょっと図星だったせいかな。それとも意地悪な質問だからかな。
分からないうちに、私は答えた
「...寂しいけど、大丈夫。悪いことじゃないんだもの」
そう呟くと、それさえわかっていたかのように笑われてしまった。
ふふふ、とおしとやかに笑っては、もう一度私の頭を撫でて近くの椅子に腰掛け
「サッカー部で試合があるらしいわ。」
「...マサキ君が、出る？」
「ずっとうわ言みたいに[来て欲しい]って。」
「...」
そんなことを、彼が。
様々な思考を巡らせながら顔を上に上げる。照明の光が目に突き刺さった。
そっか、マサキが。サッカー部入ったんだもん、そうだよね。
お友達できたかな、サッカー楽しんでるかな、ユニフォームはもう貰ったのかな
きっと素直じゃないマサキ君も素直なマサキ君も、受け入れられてるよね。
願うように思うと、理由もなく胸の奥が掴まれたかのように苦しくなった。
「...試合、見に行ってあげたい、な」
「そうしてあげなさい。」
姉さんは珍しく【ダメ】と咎めなかった。
...優しい人って、こういう時だけ狡い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
佐奈(プロフ) - 狩穂さん» うわぁぁぁぁ嬉しいです！！ガチにマジで！素敵だなんて...感謝感激雨嵐...更新頑張ります！その内続編も出しますのでそちらもお願いします！！ (2014年9月14日 21時) (
レス) id: d991105954 (このIDを非表示/違反報告)
狩穂(プロフ) - やっぱりこの小説ステキです〜(*´・ω・) 毎日、更新、楽しみにしてます(笑 (2014年9月13日 19時) (レス) id: f53fe779b4 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - 暇人です！さん» コメントありがとうございます！意外にってことはシリアス度が少し低かったでしょうか？でもはまっていただき嬉しいです。これからもよろしくお願いします！ (2014年8月24日 0時) (レス) id: c702872890 (このIDを非表示/違反報告)
暇人です！ - 意外と面白くてはまりました！！ (2014年8月24日 0時) (レス) id: ae1125bdad (このIDを非表示/違反報告)
佐奈(プロフ) - 狩穂さん＞コメントありがとうございます！こんな小説でよければ頑張って更新率あげようと思います！楽しみにしてもらえて感激です！ (2014年8月19日 13時) (レス) id: d991105954 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐奈 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e2e95d529a1/
作成日時：2013年7月29日 22時
