第10話 ページ11
長義side
失態だ
まさか、あんなことになるだなんて...
しばらく酒は控えよう
「本歌、少しいいか？」
「何のようかな？偽物くん。俺は忙しいんだけど？」
「主と何かあったのか？」
「何か、とは？」
「いや、主と本歌の様子が変だから気になってな」
「何かあったら、どうする？」
「主を傷付けることなら、本歌でも許すことは出来ない」
「へぇ。随分と主が大切なんだね」
「喧嘩なら早く仲直りした方がいい。長くなるだけだ」
「言われなくても分かっているよ」
まさか偽物くんに言われるだなんてね
まぁ、いつまでも
こうしてはいられないか
ちょうど報告書も出来ているし、話に行くなら都合がいい
部屋を出ると目の前に主が立っていた
「主...」
『あっ、この書類を目に通して貰おうと思って...』
「ちょうど良かった。俺も報告書が出来たところだ」
『じゃあ、預かるね』
「話があるんだ。少し部屋に上がってくれるかな？」
『うん。わかった』
部屋に招き入れると落ち着かないのか報告書を眺めている
さっさと解決すればいい
「この間は迷惑かけたね」
『ううん。気にしてないよ』
「酔っていたとはいえ、あんなこと...」
『私は嬉しかったよ？』
「え？」
『酔っていたとしても、甘えてくれてるみたいに思えて...』
「....」
『ご、ごめん。また不快にさせた？』
「いや。他にも迷惑かけたり、変なこと言ったりはしていなかったかな？」
『迷惑じゃないけど...』
言いにくそうにしているな
何かあったことには変わりなさそうだ
「教えてくれないかな？これだと、いつまでもスッキリしない」
『...わかった』
主は正直に全てを話してくれた
「なるほど...」
『酔っていた時の言葉だから、気にすることは＿＿』
「それは本心かな」
『え？』
「君はいつも偽物くんを見ている。それは俺の時だけではない。特別な存在かは知らないが、俺が居る時ぐらい俺を見てくれても良いんじゃないかな？」
『そんなに見てるかな？無意識なんだよな...』
無意識ね...
それなら尚更...
『いつも傍に居るから自然と目に行くのかもしれない』
「なら、俺が傍に居れば君は俺だけを見てくれるのかな？」
『それは...』
「今、君の隣に居るのは誰かな？」
『長義？』
「あぁ。そうして俺を見てくれないかな」
『気を付けてみる』
気を付けるね...
まぁ、元に戻れたことだ
良しとしよう
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作者名：ゆきんこ | 作成日時：2022年3月14日 2時
