第166話 ページ19
膝枕をすると嬉しそうな顔をしながら私の顔を伺う三日月さん
こんなことするの初めてだから
どうしてあげたらいいのか分からない
「このままAの膝枕で眠るのも良いな」
『足がそろそろ痺れてくるからダメです』
「そうか...」
ご機嫌だった三日月さんが次は落ち込みだした
子供みたいだ
『添い寝なら...』
「添い寝か」
『はい』
「何もしないという保証はないぞ？」
『...察してます』
「はっはっは。そうか」
三日月さんは最後の最後まで
私を困らせるんだから...
「Aよ。例え会えなくなったとしても、俺はお主に出会えたこと幸せに思うている」
『三日月さん...』
「お主への気持ちは変わらない」
『私もです』
「もう時間も遅い。名残惜しいが眠るとしよう」
『はい』
起きたら明日を迎えることになる
嫌だけど仕方ないことだ
このまま時間が止まればいいのにと願いながら
私達は眠りについた
目を覚ますと三日月さんが身支度をしていた
「目が覚めたか」
『おはようございます』
「あぁ。おはよう」
こうして挨拶を交わせるのも今日で最後なのかな
どうしてもマイナスに考えてしまう
でも、落ち込んでいても何も変わらない
笑顔で見送らないと
「皆には昨日挨拶を済ませた。俺はこのまま本丸へ戻る」
『朝食ぐらい食べていきませんか？』
「いや、遠慮しておこう」
『どうしてですか？』
「ここは居心地が良いからな。離れがたくなる」
"ずっと居れば良いのに"って言いたい
でも、三日月さんを困らすだけだから我慢しなくちゃ
『忘れ物はなさそうですね』
「いや、まだある」
『え？』
見渡してみるも、三日月さんの持ち物らしきものはない
『大丈夫そうですけどね』
「A」
『なんですか？』
振り向いたその時、三日月さんにキスをされた
それは別れのキスのように感じた
「これが忘れ物だ」
『三日月さん...』
「いつか、また会おう」
『次は私のこと、覚えていて下さいね？』
「もちろんだ」
『約束ですよ？』
「あぁ」
『それから...それから...』
言いたいことはある
でも、いざ目の前にすると...
「A。話の続きは再会した時にしよう。永遠の別れではないのだからな」
『そうですね』
「ではな」
『また...』
三日月さんが居なくなった静まりかえった部屋はとても寂しく感じた
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作者名：ゆきんこ | 作成日時：2021年4月18日 13時
