第92話 ページ45
体調が悪いと嘘をつき式から抜け出した私達は
本丸へ帰ることにした
その帰りの途中
私は加州に三日月さんのことを全て話した
このことは無かったことにはならない
拒絶をされたとしても仕方のないこと
事実なのだから
だけど加州は何も言わず、ただ聞いてくれた
どうして、うちの刀剣男士はこんなにも優しいのだろう
本丸へ帰ってくると、何振りかの刀剣男士が私達の帰りに気付き、「おかえり」と出迎えてくれた
その中に三日月さんも居た
優しく笑っている三日月さんを、私は今直視出来なかった
三日月さんを思い出すからだ
拒んだ時の三日月さんの顔は悲しげにしていた
間違えたことをしたとは思っていないけど、正しいとも言えない
もう取り返しがつかないことだ
[A、少し良いか?]
『三日月さん...どうかしました?』
[先程、様子が可笑しかったからな。少し気になってな]
『....』
三日月さんにはお見通しなんだな...
『ちょっと疲れただけですから』
[嘘が下手だな]
『....』
[三日月宗近か?]
『...はい』
[そなたを悩ませる原因は俺にもある。何があった?]
優しく問う三日月さんに私は今日あったことを話した
[そうだったか...]
『すみません。三日月さんにこんな話をして...』
[なに、気にすることない。俺の方こそ悪いことをしたな]
『そんなことないですよ。これは虫除けなんですから』
[だが、三日月宗近には効かなかった。寧ろ逆効果だ]
『...初めて、三日月さんが怖いって思いました』
[嫉妬という感情は自分を抑えられなくなる。俺には分かる]
『知らない男の人を見てるみたいで...気付いたら私、三日月さんのことを突き放していました』
[そうか]
『私は三日月さんを傷付けた...』
[....]
『すみません。三日月さんに、やっぱりこんな話をすべきじゃないですよね。1人にして下さい』
[今のそなたを1人にすることは出来ん]
『え?』
[辛そうな顔をしている]
『....』
[俺は楽しい時も、悲しい時も、辛い時もそなたの傍に居たいと想っている]
『でも!』
[例え、あの三日月宗近を想っていたとしてもだ。ただ、傍に居たい。それだけだ]
『どうして...そんなに優しいんですか』
[そなたが好きだからだ]
『...っ!』
[すまんな。じじいは頑固でな]
『三日月さん...』
[我慢することない。俺の胸を貸そう]
『...ありがとうございます』
私は三日月さんの胸を借り、泣いた
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年9月22日 20時