約束の月と、鍵盤 (ページ13)

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思ったより早くやってきた放課後に、私はあまり喜べなかった。

「…早く帰りたいなあ」

一番楽だと思ってこの委員になったのに週に数回ほど花壇に水やりがあるとは知らなかった。

『Aちゃんって美化委員だったんだ』

「え？あー…何もしなくていいって思ってたから」

『あ、私はスア！テヒョン君と同じクラスなの』

クラス違うと分かんないよねと恥ずかしそうに笑ったスアちゃんは、小柄で栗色の髪をしたボブヘアーが似合う子だった。

「これからよろしくねスアちゃん」

しばらく花壇の前でお喋りをして作業終了の声が掛かると、またねとスアちゃんは先に帰っていった。

「あんな可愛い子いるとかテヒョン言ってなかったのに」

YG「…やきもち？」

後ろから聞こえた声に振り返ればすぐ後ろの壁にユンギ先生が煙草を左手に持ちながら寄りかかっていた。

「こんな所で煙草、いいんですか？」

YG「お前が黙ってればバレない」

「………」

YG「…今日はサボらなかったのな」

「あ…はい。眠たくなかったし」

YG「へえ」

さっきのユンギ先生が頭から消えてくれなくて。

「私、帰りますね」

先生に背を向けて歩き出すと私を避けて薄くなる白い煙がゆらゆらと揺れた。

YG「A」

「っ、」

掴まれた右腕がドクドクと波を打ってそこだけ熱を持ったように熱い。

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