ちょっと待ってくれ、おい。 (ページ7)

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「全く、じゃあゲンに慰めてもらうからいいもんね！」

「男が「もん」とか言ってんじゃねぇ気持ち悪りぃ」

「ほんっとに当たりが強いぜお前ら！」

強がり演技の高笑いで悲しい心を封じ込める。

いや、言うほど傷ついてないんだけど。

発電所の方にいるかな、と適当に当たりをつけて歩き始める。

科学王国も言うほど広いわけじゃないので発電所もすぐ着くだろう。

そう、俺はこの時初めて声を荒げ、彼の側にいなかったことを後悔した。

「…ッ、ゲン！！！！！！」

傷付いたゲン、振り上げられた刃物、大柄な男。

何より人が傷付くことで、俺が声を荒げる事態にも驚いていた。

なんだ、何があった。

落ち着け、俺のすべきことはなんだ。

助けを呼ぶ、そんな時間はない。

なら助けるのか、俺が、他人を？

「…ふぅ」

じゃ、ないよな。

「今、ここにいるのは俺」

大太鼓のように鳴り響いていた鼓動が、瞬時に収まった。

深呼吸をして、地面を蹴る。

振り上げられた刃に、止まる気は感じられない。

動けるはずもないゲンを助けられるのは、俺しかいない。

そうだよな、知っている。

“俺はそういう奴だった”んだから。

顔もよく分からない俺の股下に滑り込み、ゲンを抱き抱える。

男に横抱きは初めてしたが、今回ばかりはプライドなんのと言っていられない。

とりあえずゲンが華奢なほうで良かった。

決して軽いとは言ってないからな、重いことは重い。

見た目より重いなんだこれ。

「どっかの誰か知らんけど、消えてもらえる？」

俺も手荒なことはしたくないんだよね、と加える。

敵意剥き出しで申し訳ないが、戦闘能力ほぼ０の俺は一撃食らったらアウト。

どうにか去ってもらいたい。

「何の音だ…！？」

「コハク！いーとこに来た、最高だよお前！
千空、なんか手当て出来そうな薬草とか…
そーゆーのはクロムの役目だっけ？
とにかく早く！」

「お、おい！どういう状況なのだこれは！
その蝙蝠男、死にかけじゃないか！」

「あ゛～、状況は理解した。
レイテメー、ゲンを運べるか？」

「おっけ、だけどちょい待って」

理解の早い千空が、俺たちに指示を出す。

このまま運べなくもないが、これは体重以上の重さがある。

異様な重さだ。

まず上半身だけ脱がせれば、予想通りに血糊袋が出てきた。

たしかにマジシャンともあろうお方が、敵地に仕込みなしで乗り込むってのもありえない。

「やるじゃねえか、骨の髄までマジシャンだよ。
テメーはよ……！」