ちょっと待ってくれ、おい。 (ページ1)

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プロローグページ1

幼稚園児のとき、俺は苛められていた。

『おまえのなまえ、おんなのこみたい！
へんなのー！』

１人の子が言い始めると、他の子は便乗する。

しかしどうだろう。

俺の名前は西城怜衣。

“れい”という名は男女兼用である。

だから俺の名前、これになったんだし。

名前をいじられるようになってすぐ、俺は言った。

『きみのとぼしいちしきのほうが、おれにとってはへんにみえるけどね』

このときの俺は、意味を理解した上で言った。

そう、もう気づいた方もいるだろう。

俺はバリクソ文系なのである。

なのに、なのに…！

「ちょっと待ってくれ、おい」

息を整えてもう一度目を開ける。

「ちょっと待ってくれ！！！！！」

見渡す限りの豊かすぎる緑の森。

ここはどこの原始時代ですかと問いたくなるような野性動物たち。

そして多種多様なポーズで放置された石像たち。

俺はこの世界を知っていた。

「(姉ちゃんが読んでた漫画のやつだっ…！)」

千空まじやばーいとか言ってたのでよく分かる。

ちなみに姉ちゃんは理系なのでこの漫画を読めたが、俺は文系なので貝殻の話辺りで読むのをやめた。

理解不能だった。

貝殻が石鹸にだいへんしーんとかありえなくない？

ともかく。

それとなーくの概要しか知らないけどイシガミ千空って奴を探せば良いことだけは理解した。

「ん、ちょっと待てよ？」

俺は一歩出した足を引っ込めた。

今、自分が着ている服を見る。

学ランである、黒の。

某バレー漫画のリベロくんが憧れていた黒の学ランなのである。

この“ストーンワールド”で、“学ラン”である。

「えっ、詰んでない？」

そういえば、姉ちゃんの話によれば司帝国と科学王国は対立しているらしい。

あれ、司ってあれだよな。

霊長類最強の高校生、獅子王司だよな。

あれ一緒に貝殻拾ってなかった！？！？

いや、拾ってたのは雑頭くんだけど。

彼名前なんだっけ、大木なんとか…。

ともかく。

このまま千空とやらを見つけても司帝国の奴らと間違われることは大体理解できるし、学ランの可能性についても100%触れられる。

非常にマズイ。

最初っから最後まで詰んでいる。

毎年おみくじで大凶を引く俺が言っているのだから間違いない。

俺のことは俺が一番よく分かっている。

これは生き残る確率0%の無理ゲー。

「…え、学ラン…？」

「俺もう大凶の域超えちゃってない！？！？」

早速詰んだ。