第2話 廃校危機のお話 ページ4
「宝石が丘は声優養成所として開校し、今年で創立100周年。
前途洋々たる青少年に徹底した英才教育を施し、今現在
最前線で活躍する声優にも、本校で学んだ者は多い」
最初からフルスロットルか。
たったこれだけの台詞でも、学園長がどういう人柄なのかよく分かる。
さすが、プロだよ。
「だがしかし!
近年のアイドル声優ブームを受け、派手な広告で生徒を獲得し
目玉の飛び出るような授業料で適当な教育を受けさせ
一山いくらで声優事務所に送り込む……そんな養成所が増えた」
「ひっどい言いようw
そのかわり、潰れる生徒も多い、ってね…www」
「君も結構酷いよ…」
近くの席の男の子に突っ込まれ、私も笑って返す。
「クソまじめな宝石が丘は競争に勝てず、負けました。
声優事務所との契約を取れない→契約料が入らない。
これがもたらすものはすなわち、金・欠・です!」
「言っちゃった……」
「朝から聞くには生々しい話ですな〜」
どこからか生徒の呆れた声が聞こえた。
私も呆れている生徒の一人ではあるけど。
「ユニットシステムも本来の機能を失い
生徒たちは協調性を身につけるどころか
競い合いに明け暮れ、ナワバリ意識でいっぱい」
「それは学園側の問題でしょうよ」
「ばっさりいくね…ホントに」
「宝石の名が泣きます!
原石は磨かれなくては輝かない!
キラキラ!しようよ!みんな!」
「コントか…これは…」
「待って笑っちゃうから…w」
声の届いている周りの同級生たちは笑いをこらえている。
「理事に頭を下げ寄付金を集め……学園長がだぞ、俺じゃないぞ?」
「あっ、素が出た」
「ほんとやめて…www」
「優秀な講師や子役のスカウティングも積極的に……
これ以上は愚痴になるのでやめますが、とにかく!
現状が是生されない限り、本学園の経営破綻は必至。
本年度をもって廃校を余儀なくされます!
さようなら!閉会!」
「え、終わったよ。
二つの意味で終わったよ???」
「なんかもうちょっと、あるんじゃなかった?
送辞とか答辞とか」
ほんそれ、私、代表のスピーチどうすれば?
「うん、それは卒業式だな」
………近くの人たちに共感しながら私は次の支持を待った。
私は!決して!バカじゃない!
ほんとに、成績だけはいいから。
成績だけは。
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作者名:伊織するめ | 作成日時:2019年9月6日 0時