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7話 ページ10

「ライラさん、お疲れ様でした!」
「お疲れ様でした。本日はありがとうございました」

収録を終え、にこにこと手を振るスタッフに一礼して腕時計の時間を確認するともうとっぷりと夜は更けていた。終電に間に合うかどうかは危ういが、幸いなことにエデンへの転移装置は24時間年中無休で稼働している。……急なメンテナンスが入っていなければの話だが。
なんにせよ、今すぐに帰れば明日早朝の任務にも問題なく間に合うだろう。すでに駅近くのビジネスホテルに宿を取っている。仮眠程度はできるはずだ。

「あれ、ライラ帰んの?」
「あら、クローネ隊員。あなたもですか」

事務所を出ようかというところで背後から声がかかる。振り返ると、声の主である青年──アクシアはにぱーっと笑ってみせた。

「そんな畏まんないでも、アクシアでいいって。同期やし」
「ではアクシアさん。他の皆さんは宿を取ってるみたいですけど」
「おれ明日朝から用事があってさ。今帰らんと間に合わんのよな」
「なら一緒に行きましょうか?待ちますよ」
「マジ?ちょ、待ってて、40秒で支度するわ!」

たたーっと駆けて行った背中を、愛想のいい笑顔で見送る。

「おまたせ!行こ!」

……本当に40秒ほどで戻って来た。身軽なものだ。まるで人によく懐く大型犬のようで、つい漏れかけた笑い声をなんとか無理矢理押し留めた。
そこら中で照明がキラキラと輝く中を歩いて行く。この光景はリアルワールドでもエデンでもそう変わらないような気がした。何度か近寄って来た居酒屋やホストのキャッチらしき人間も、ライラの隣を歩くアクシアを目にするとササッと避けていく。

「背の高い人が一緒だと便利だなぁ……」
「ライラさん???」
「冗談ですよ」

軽口を叩きあいながら転移装置の中に入り、タッチパネルを操作して行き先をエデン中央駅前に指定する。ブゥン、と音を立てて転移装置が動き出したとき、唐突にアクシアが口を開いた。

「ライラはさ。なんでにじさんじ(ここ)に来たん?」
「……ごめんなさい、質問の意図がよく……。初配信で申し上げた通りですよ。わが社の宣伝と取材、それから趣味を兼ねて、です」
「そっか、ごめん。なら質問変えるわ」

眉尻を下げて申し訳なさそうに苦笑するライラから、アクシアはじっと目を離さない。人懐っこい微笑みを浮かべながらも隙を見せない表情だ。まるで、狼が狩りをするときのような。

「おれらに近づいて、何が目的?"梟"のライラ・クラークさん」

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作者名:七福 | 作成日時:2024年3月9日 16時

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