13話 ページ17
「アクシア、ライラ？次ボイス二人の番だってよ。なに話してたん？」
「あー……今度三人でえぺやりたいって話してた！」
「……は！？」
ギョッとした顔で見上げてきたライラに向かって、してやったりとばかりにアクシアは歯を見せて笑ってやる。ローレンはと言えばそんな二人のやり取りはさして気にも留めない様子で、ライラのほうを見てキラキラと少年のように目を輝かせていた。
「マジ？え、三人って俺とアクシアとライラでってことだよね？えなに、ライラもFPS好きなん？ヴァロとかもやんの？」
「あ、いや……ごめんなさい、実はやったことないんです。FPSがっていうか、そもそも対人ゲーム自体……」
「あぁなるほど、オッケオッケ。いいよ、俺とアクシアで教えっから！任せて頂戴よこのローレン・イロアスに」
──この数日で、アクシアはなんとなくわかったことがある。たぶん、ライラはローレンにそこまで強く出られない。現にワクワクを隠そうともしないローレンの笑顔を前にして、ライラはなんだか罪悪感を覚えたかのような顔をしている。もしかしたら彼女に課された任務について、彼女自身では納得が行っていないのかもしれない。それでも組織に属する人間として仕事を全うしなければならない──そういった経験はアクシアにも、そしてきっとローレンにも覚えがある。
恨みがましくこちらを見上げてくる視線に内心でべっと舌を出してみせて、アクシアは一足先に収録ブースへと向かった。
「なんっっっなんですかあの人は！！！？？」
エデン・タイムス本社裏手の喫煙ブースに、ダン！と壁を殴る音が鈍く響く。Aは煙草を吸う
「アクシア・クローネ……彼の思惑がさっぱりわかりません。こちらを警戒していたはずなのに、次の日にはあたしとターゲットを接触させようとしてくる」
「苦労してるみたいだな。珍しいじゃねえか、お前ほどの"梟"をしても難しい任務ってか？」
「馬鹿にしないでください」
ギロリと見上げられた視線に、男は「おお怖い怖い」と大げさに肩をすくめてみせる。
「まあなんだ、そうカリカリするもんじゃねえよ。いつも言われてんだろ？」
「……焦りは視野を狭くする、ですか」
「わかってんじゃねえか」
「肝に銘じておきます」
ひとつ大きなため息をつき、釈然としない顔のままAは喫煙ブースを後にした。
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作者名：七福 | 作成日時：2024年3月9日 16時
