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8話 ページ11

「エデン公安局の諜報隊員は、コードネームとして"(フクロウ)"って呼ばれることがあるらしいんよな。昼のエデンを守るおれら機動歩兵隊や都市警備部隊と対になる、夜のエデンを見張る狩人──つまり"梟"。ところで……『エデン・タイムス』の社章って確か、大きな木に止まる梟の絵柄だったよね?」
「…………まさか、たったそれだけのことでわたしをスパイ扱いするつもりですか?……面白い。アクシアさん、もしかして意外と推理小説家の才能がおありだったり?」
「それだけじゃないよ。エデン最大手の新聞社って、諜報隊の隠れ家としては都合がいいんじゃない?情報を隠すのも捏造するのも簡単。"取材"ってことにすれば色んな場所に入り込める」

──何が狙いだ。牽制か、あるいは……
ジャケットの下に隠し持った拳銃がいつでも取り出せることを密かに確かめながら、ライラは注意深くアクシアを観察する。
──いや、そうか。彼は先ほど『おれら』と言った。つまりライラの、もとい、Aの標的がローレンであることには気づいていない。だから探りを入れに来ている。……気づいたうえでブラフを仕掛けているのなら話は別だが。この男に限ってそんな小細工は仕掛けないような気がしていた。転移装置の中には監視カメラが設置されていない。リアルとバーチャルの移動の際にかかる負荷に、機器が耐え切れないからだ。わざわざそんな場所で探りを入れにきたこと自体、目の前の相手が敵か味方か、確信を掴めてはいないということ──そこまで考えて、ライラは警戒を解いたかのようにぱっと両手を広げてみせた。

「嫌だなアクシアさん。そんな邪推をしなくたって……わたしがエデン公安局員であるということと、素性を隠してデビューしたこと……この二つにどんな不都合があるというんです?諜報員が素性を隠すのは当たり前のことじゃありませんか」
「!!じゃあ……"梟"だってことは認めるってわけね?」
「そこまで確信を持たれていたのでは仕方がありません。ですがわたしが"梟"だからと言って、なにも皆さんに危険が及ぶとは限らないじゃないですか。まあ仮に……あなた方が国家転覆でも企んでいるのであれば、話は別ですが」

途端にアクシアの表情がこわばる。しかしそれは図星を突かれたというよりも、カチンときたといったほうが正しいような、そんな表情だ。

「……わたしを信用できないのなら、せいぜい祈っていてください。あなたのご友人が善良なエデン市民であることを、ね」

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作者名:七福 | 作成日時:2024年3月9日 16時

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