【2j3j】エデン妖精譚Ⅱ (ページ40)

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85話ページ40

「いいよ！良い線行ってるよエバさん！じゃあ『真なる王』は？」
「それは……うぅん、正直なところお手上げだね。『真なる王』である条件が血統なら、まず初代エデン王の血筋を探さなきゃいけないし。それって途方もない道のりでしょ？」

腕を組んでオリバーは唸る。エデンという都市が出来たのは何千年も昔だ。その初期に追放された王家の生き残りを探すこと……これがどれほど困難なことか。そも、初代エデン王の子孫が生き残っているかもわからないのだし。ここに来て手詰まりといった感覚がある。
するとアクシアはきょとんと首を傾げ、「なんで？」とこぼした。

「居るやん。初代エデン王の血筋なら、今おれの目の前に」
「………………は？？」

これ以上は場所を変えようとアクシアが言うので、二人は屯所を後にして市街の大通りから一本裏に入った通りを歩いていた。この通りに並ぶ建物はその多くが夜間に営業する酒場や飲食店で、真昼間のこの時間はしんと静まり返っている。二人の話に聞き耳を立てるような人間も居なかった。

「エバさんあそこまでわかってんだから、てっきり全部お見通しかと思ってたのに」
「いや……さすがに信じがたいっていうか、想像つかないでしょ。正直今も信じられないよ」
「そう？ま、ここは答え合わせといきますか。おれの家にずっと昔から伝わってる話があんだけど……」

アクシアが語るところによれば。
──かつて妖精の力を借りて都市エデンを立ち上げた王は、その娘が妖精の女王との約束を反故にしたことで、一族もろともエデンを追放されることとなった。彼らはリアルワールドに落ち延びて、自分たちの罪を戒めとして記録に残した。これとリアルワールドの伝承とがごちゃ混ぜになったのが、すなわち──旧約聖書における、アダムとイヴの追放。

「じゃあ、僕のご先祖様がリアルワールドからエデンに迷い込んできたっていうのは……」
「そう。前提が逆やね。エバさんのご先祖様があっちからやって来たんじゃなくて、リアルワールドに逃げていた一族が何らかの理由でエデンに帰ってきた。もしくは──連れ戻された。これが真相」

オリバーは片手で頭を抱えた。世界が二、三回はひっくり返りそうな話だ。実はドッキリでした──なんて誰かネタバラシしてくれないだろうかと思ってみても、辺りにはオリバーとアクシア以外に誰も居ない。第一、アクシアはそういう質(たち)の悪い冗談を言うような男ではないと、オリバーはよくよく知っていた。