【2j3j】エデン妖精譚Ⅱ (ページ4)

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49話ページ4

「囮……私が？」

突拍子もない話に思わず先生の方を仰ぎ見ると、先生はひとつ短くため息をつく。

「僕は反対したんだけどね。ご両親から君を預かっている身としては、目に見えている危険に君を晒したくはないよ」
「もともとはパタちが囮役になるはずだったんだが……前に別件でソイツの依頼を受けたことがあって。面が割れてるから囮には向かなかったんだよな」

シュンとうなだれるレインさんの横で、「もちろん」とアクシアさんが口を開く。

「おれらとしてもAを一人で放り込むつもりはないよ。作戦中はおれが護衛兼サポートでずっと側に付いてるし、当日の会場には都市警備部の私服隊員が何人も張り込んでる。何かあってもすぐに対応できるし、Aには傷ひとつつけさせんからね」
「つってもまぁ、一般人に無茶なお願いしてるのは承知の上だし、別に強制もしない。一応、囮作戦以外のプランが全く無いってわけじゃない」

どうする？と改めてローレンさんは問うてくる。翡翠色の瞳がまっすぐに射抜くように私を捉えた。思わず両手がぎゅっとセーターの裾を握りしめる。ほんの少しだけ震える拳を見つめ、それからキッと顔を上げてローレンさんの視線に真正面から相対する。

「……やります。やらせてください、囮役」
「A！」
「先生。私、考えなしに引き受けるんじゃないんです」

たしなめるような先生の声に、振り返って視線を合わせて私は言う。

「ここでこの仕事を引き受ければ、私はこの件に関して『協力者』ないしは『当事者』になれる。そしたら、部外者には到底明かされないような捜査情報だって知れるわけですよね？そして、その中には妖精に関わる情報もあるかもしれない。だってこの男はノーグ地方のあの村と繋がっていたんだから」
「でも、だからって……」
「アクシアさんやローレンさんたちの言うこと、絶対聞きます。むやみやたらに危険な真似はしません。今、ここで、神に誓ってでも先生に約束します！」

ずいずいと先生に詰め寄る勢いでまくしたてる。その様子にいくぶんか気圧(けお)されたのか、先生はわずかに目を泳がせた。──いける。あと一押しだ。

「……それに。私と妖精の関わりについて、真実を暴くって約束してくれたのは先生ですよね？」
「う゛っ」
「私、先生がそう言ってくれた日からずっと、覚悟はできてるんですよ」

先生の目を真っ直ぐ見つめてそう言うと、ついに先生は両手を挙げて降参のポーズを取ったのだった。