48話 ページ3
4限目の講義が終わった後、先生に呼ばれて研究室のドアをノックする。扉の向こうから聞こえてきた声に促されて中に入ると、エデン組全員が中央のローテーブルを挟んだソファに腰かけて待っていた。
「A！久しぶりだな！もう怪我とかは大丈夫か？」
「お久しぶりです。レインさんからお借りした物のおかげで、かすり傷程度で済みました」
「よかった〜！気が気じゃなかったんだぞ！」
「ホントそれよ。肝が冷えたどころじゃ済まんってマジ」
呆れたと言わんばかりのローレンさんの声に苦笑いしながら私が先生の隣に腰掛けるのと同時に、「それで」とローレンさんが切り出した。
「取り調べの結果、アーサー・モルガンは今回の事件には関わっていないことがわかった。……っつーか、関わっていた証拠が無い、って言ったほうが正しいな。ハー……くそ、まさか正式に試験受けて入学金払ってこの大学に居たなんて……」
「関わっていた証拠が無い、っていうのは？」
「村民全員が、アーサーの事件への関与を否定したんだよ。証拠があったとしても、ありゃ綺麗に抹消されてんだろうな」
そもそも、モルガン青年はあの村の生まれではないらしい。十数年前にどこか村の外から迷い込んできた男の子で、教祖として崇められ始めたのもその頃なのだとか。更に言えば、あの村が狂気とも言える崇拝やケシを『薬』として村の外へ売り出したのもここ数年のことだという。もっとも、妖精を閉じ込めて豊穣を我が物にしていたのはずっと昔からだったらしいが。
「だから……」とアクシアさんは鞄から一枚の資料を取り出す。いかにも成金といった風体の男の写真がそこには載せられていた。
「アプローチを変えてみようって話になったわけ。コイツに接触してね」
「……この人は？」
「あの村で栽培したケシから出来た『Serpent』を入荷して、学生たちに売りさばいてた奴だよ」
ぐ、とローレンさんが身を乗り出して言う。
作戦はこういうことらしい。その男はエデンの富裕層が集まるパーティーで未成年の男女を見つけ、『営業』をかける。そこで誰かが囮としてそのパーティーに潜入し、『営業』の瞬間を抑えることで男を逮捕。新たな証言を引き出そう──と。
「その話、私が聞いて大丈夫なんですか？一応部外者では……」
私がそう言うと、ローレンさんはちらと先生のほうを見遣る。先生は「僕は納得してないよ」と言いつつも、彼にその先を促した。
「この囮役を、Aに頼みたい。……やれるか？」
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作者名：七福 | 作成日時：2023年3月12日 17時
