【2j3j】エデン妖精譚Ⅱ (ページ20)

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65話ページ20

がやがやと賑わう大学の学生食堂。2限終わりともなれば昼食を求める学生でごった返し、席は必然と争奪戦になる。なんとか確保した4人掛けのテーブルに友人と向い合せで座り、フォークを手に持ったところで頭上から声が降ってきた。

「相席いいか」

見上げれば、他でもないアーサー・モルガンがこちらを見下ろしている。その手には食堂で一番安いカレーライスの乗ったトレイがあった。

「……なんで君と」
「他に席空いてないんだよ。じゃなきゃオレだってお前となんか願い下げだ」

そこまで言う？と喉まで出かかった声を無理矢理飲みこむ。誰が見ても明らかに相席を願い出る人間の態度ではないが、向かいに座る友人は学部でも噂のイケメンの登場にすっかり舞い上がっている。ため息をつきながら隣の椅子を引いてやると、彼もまたやれやれとばかりに腰を下ろす。いちいち態度が大きいのはなんなんだ。お尋ね者のくせに。
黙々とカレーを口に運ぶアーサーの隣で、私は友人との話に花を咲かせながら昼食を摂る。15分ほどそうしていたところで、空っぽになった皿を前にアーサーが突然口を開いた。

「何かあったのか」
「……え？」
「お前の『周り』の様子がおかしい。さっきから視界にチラチラチラチラと鬱陶しいんだよ」

向かい側の席でぽかんとする友人をよそにアーサーは私の目をじっと覗き込む。……あぁ、そういえば彼も妖精とコミュニケーションが取れるのだった。面倒なことこの上ない気持ちになって、思わずため息をつく。

「何かあったとしても、君には関係なくない？」
「鬱陶しいっつったろ。十分関係あんだよ。お前のことだからどうせ……エバンス教授関連か？あの人に何かあったのか」
「………………はぁ？」

自分でもびっくりするくらい低い声が出た。
腹の底からふつふつとマグマのように湧き上がる怒りを抑えられず、むしろそれに身を任せて立ち上がる。

「君がそれを言うの？アーサー・モルガン。よりにもよって、君が？」
「俺があの人を案じちゃまずいのか」
「よく言う！君のせいで先生はあんな危ない目に遭ったっていうのに！！」

衝動に任せてアーサーの胸ぐらを掴む。ちょっと、とたしなめる友人の声もほとんど耳に入らなかった。それよりも頭がぐらぐらと熱くて仕方がない。

「君のせいで……君なんか、君なんか！」
「A、そこまで」

ふいに横から伸びた手が私の手に重ねられる。声のした方へ顔を上げると、いつの間にかアクシアさんがそこに立っていた。