1 ＆ 主人公の設定 ページ1
「監督生さん、少しお時間いいですか」
「？ はい」
学園長が普段とは違う、少し真剣な顔をして俺に話しかけてきた。その雰囲気に、思わず後退りをしてしまう。
「実は……
貴方の言う、元の世界に繋がる道を見つけました。」
それは本当に急な話だった。
今日の夜、23時に学園長室に来てください。
それだけを伝えると、学園長はどこかへ行ってしまった。
「あ、ちょ」
「私にも色々準備がありますので。
……別に、帰りたくなければ来なくても結構ですよ」
「いや、そういうわけでは…………行っちゃった」
周りの人達は、どんな反応をするだろうか。
悲しむ？喜んでくれる？
……わからないや。
---
カバンなんて持たずに、前にエース達からもらったペンをポッケにしまって、外に出る。
グリムにもこのことは言っていない。
机の上に「Thank you」と書いたメモ用紙なら置いてきた。リドル先輩が教えてくれた、俺が書ける数少ない英語のうちの一つだ。
ノックは三回。三回すれば、扉は開く。
ほら、今だって開いた。
「……来たんですね。
何か、お友達に言い残したいことは」
「えっと、じゃあ
『今までありがとう、楽しかった。迷惑かけてごめんね』
と、お願いします」
「承知しました。
このことは、今度の全校集会にでも言いましょうかね」
ふふ、と学園長が笑う。
何かと面倒事を押し付けてきた学園長だが、こうして見るとやっぱり頼りになるなと感じた。
「では、そろそろ行きましょうか。
この鏡を潜ってください。決して後ろは振り向かず」
「わかりました」
出された鏡は、俺と学園長を映し出す。
やめてくれよ。学園長に、俺が今している顔がバレてしまうじゃないか。
「……私、貴方のことを息子のように思っていたんですよ。
なので、……貴方がいなくなると思うと、寂しくて」
「俺もですよ。
……本当に、ありがとうございました。お元気で」
言い終える頃には、もう、この世界の言葉が話せる魔法薬の効果が消えていた。
最後に学園長がなんて言っていたのかは、その時の俺に伝わってもいなかった。
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加茂 A
中学一年生後半
頭を使うことが苦手
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作者名：筆跡 | 作成日時：2022年1月18日 19時
