第18話 ページ19
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あーあ、だってほら、料理は非の打ち所が無いし。
「お味は?」
『……不味い
絶品過ぎる手料理に舌を巻いて、心配そうに私を見守る中原サンにボソリと返答する。
『……美味過ぎだし、』
不貞腐れ気味にそう吐いた。
「そりゃどーも。お気に召した様で光栄だ」
チラリと正面を見上げると、中原サンは得意げに、それでいて満足そうに私に笑いかける。何なんだこの不器用そうなのに実はすっごく器用な男は。
『そう見られちゃ食べれません』
態とらしい視線。
細められた瞳に気障っぽく置かれた肘。
突き匙を置いて、葡萄酒の注がれたグラスに手を伸ばした。
最後の一口。葡萄酒を傾けた、ーーーーーのだけど
『____は……、中原サン?』
グラス越しに見えたのは
葡萄酒片手に机に突っ伏す此の家の主。
葡萄酒をごくりと飲んでから、私は名前を呼ぶ。
それでも返事は無かった。
中原サンは空の食器や葡萄酒をお構い無しに、死んだ様に机に接吻を落としていて______いや、は
『ちょっと中原サン?』
先程まで上機嫌に
どうしたのだろう、と懊悩する前に、微かに握られた葡萄酒の水面が揺れている事に気づく____と云っても、減っているのは僅か二口程度
それだけで何か起こるのは可笑しいし…
『中原サンってば』
少し啄いてからぐわんぐわんと肩を揺らす。家主に爆睡されては何も出来ない。真逆、嘘でしょ?
「あ〜?A〜、」
『酔っ払ってるんですか』
顔は赤く、目は朧気。どう見ても______葡萄酒二口で酔っ払った模様だ。
『お酒弱い癖に高級酒を買うって……』
どうしよう。
寝台に連れて行く、か。うん。それしかなさそうだなあと思いながら中原サンを眺める。それとも何か対処法でもあ____
「善い香り」
『へ』
急な出来事に心が揺らぐ。
突っ伏して細められた瞳は、私を見詰めながらほくそ笑んでいる。それも、ぎゅっと、私の着ている服を摘みながら。
自分の香りに落ち着いて「善い香り」なんて赤ちゃんじゃあるまいに。
確実に之は寝室に送った方が善いのかも知れない。
否、絶対そうだ。
『中原サン、寝室に』
その時だった。
ゆさゆさと肩を揺すって溜息を吐いた時、
ピンポーン
あっけらかんとした音。
来客を知らせるインターホンが鳴り響いた。
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レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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