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早く早く早く_______!

私が飛び込んだのは土砂降りの世界。

息を切らして雪崩のように駆け出した。
建物へ逃げ込んでくる人の波を逆走して、ひとり雨で期待を膨張させて、自然と笑みを零して傘を握る。

今までになく回転する足は、縺れて今にも転びそう。浮遊感に近い感覚は、私の気分も浮かばせる。

「ふふっ、」

駄目だ。思わず口元が弧を描いてしまって。

土砂降りの中でも私は____私だけは

頭に黒い帽子が浮かぶ。
名前さえ呼び合えないけれど。
好きなものさえ聞けないけれど。

他愛のない話は出来るから。

フワリと笑う青が雨に咲く。


雨は、二人だけの世界、______…なんてね。


「きゃっ」
「すみません!!!」
「ッ、ちょ、君!!危ないじゃないか!!」
「ごめんなさい!!」


キキィッ、と急ブレーキ音が飛び交う。
曲がり角で自転車と女性とぶつかりそうになった。原因は私の飛び出し。危なかった。そんな危機感も飛んでしまうほど、


「本当にすみませんでしたッ!!!」


走る。走る。疾走る。

後ろから怒鳴り声が聞こえたが、その声は雨に断ち切られて聞こえない。
私の耳にはもう、
雨が奏でる歓呼の音色しか聞こえない。

息が途切れる。
すぐに吸い込む。喉の奥が痛い。


踏み出す度に変わる景色。
回る観覧車も、掛かる橋も、赤い煉瓦も____横浜の街は、灰色に沈んでいた。

カラフルな傘はその世界を彩って。


いつもの角を曲がる。

緩やかな坂を駆けて、川を渡る。

公園の像を抜かして先を見る。

傘を握って、息を吸う




「________帽子さん!!!!!!!」






そう云ったつもりだった。



速まる呼吸を携えて、速度を落とした

何時もの黒い傘。
その影から笑う橙色の髪。


はぁ、はぁ、と自分の声だけが響いた。


「……帽子、さん?」



ポツリ、と息が漏れた。


何時もの曲がり角、その先に居たのは。





黒い傘を持たない

びしょ濡れに俯く、橙髪の帽子さんだった。

雨→←曇り



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設定タグ:文スト , 中原中也 , 文豪ストレイドッグス   
作品ジャンル:恋愛
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高澤白 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年7月15日 20時

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