曇り ページ17
そこへ着くと、少々不満そうな顔を構えた安吾さんが腕を組みながら待っていた。
「仕事内容は確認出来ましたか」
「ふっふ、完璧ですよ」
それに先程はスミマセンでしたとボヤいて椅子に座った。何やらポートマフィアの動きを掴んだらしいからその事についてだろうか、___それとも
「君なら察しがついて居ると思いますけど。
先ずはマフィアの動向から、明日の港付近の、密輸の現場を直撃します」
「え、明日ですか?」
「何か不備でも?」
不備はないけど…!
急な話と“明日が雨”だと云う事を胸に秘め、首を横に振った。
そうか。明日が決行日。
「…雨が降れば頑張れるのになあ」
堂々と呟いた。傘を弄って天を仰ぐ。
安吾さんは溜息をつきながら眼鏡を直し、「そういう事ですからね」と私に云う。
そういう事。
明日、特異点の調査を含めた_____マフィアの捕縛をする事。
そういう意味だろうか
となるとやはり銃は腰に秘めておかなければならない。もしもの為の防弾チョッキと、玉の整理。
「…!!!」
そう思った時、チラリと目に入った窓には一面の灰色が広がっていた。窓硝子には_____幾多の水滴が、宝石の様に輝いていて。
「___雨だ!!!雨ですよね!?」
「雨です。雨ですから、落ち着いて」
目を輝かせ喚く私。宛ら犬のようだと以前綾辻先生に云われた事がある。
時間を素早く盗み見て、鞄を持って、傘を握る
扉の位置確認。
「後二分……!」
17時まで残り二分。
異能特務課はブラック企業ではない為に、きっかり定時に外へ出ることが出来る。
まあ、勝手に帰ってるだけだけど。
「日外君、明日はくれぐれも気を引き締めるように」
「はーい!ふふ、」
上司の忠告なんて受けてやるものか。
受けたとしても楽しみがある以上、右から左へすり抜けてしまうのがオチ。
残り一分
此処では何を語ろう。
そうだ、帽子さん。
でも『此処では何を語ろう』と格好つけて起きながら、実は頭は帽子さんの事しかなくて。
「……ぼ、帽子さーん。ぼ う し さ ん…!!」
「…怖いですよ」
発声練習は必要でしょうが!!
安吾さんをギラりと睨んだ。
しかし雨の効果によって口元が緩んでいる為効力はない。
____3、2、1
「お疲れ様でした!!」
今日イチの元気な声で帰りの挨拶。
私はもはや潔く部屋を飛び出た。
「こういう時は早いですねあの子」
「足元救われなきゃ善いっスけどねえ、Aサン。
明日から梅雨が明けるし____」
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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