第２０話 ページ20
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「───ごめんね」
違う。私が欲しいのは、謝罪なんかじゃない。
顔を歪め、前にある乾いた笑いを見詰めて、言葉に出来ぬ息が小さく漏れる。だから歯を食いしばった。泣かぬ様に力を入れ、睨み付けて。
『ごめんで、許されると思ってる？』
違うよ。本当は、こんな事が云いたいんじゃない。
なのに。ごめんね、なんて。そんな突き放す様に無責任な言葉を掛けられたら。違う思いがふつふつと、苦しさと共に胸に襲いかかって来るの。
「……許されようだなんて思ってないよ」
本当は、もっと、もっと違う事を云いたかったのに。
私の知らない太宰の表情が、遠くに感じて。
其の明るい服装も、届かぬ身長も、幼さの残っていない顔も。全部全部、私の知る太宰は居ないんだって。もう私の手の届く所には居ないんだって、知らしめられている様で。
焦る鼓動が、更に強く胸を突いて来るから
『私は、あんたのせいで、食べ物の味も、恋愛の仕方も、呼吸の仕方も判らないままなのに…！』
突かれて空いた大きな穴から、留めていた筈の感情が溢れ出す。
太宰は今、どんな顔をしているか。
其れすら目に入れられぬ程、血の様に止まる事の無い感情が、ドクドクと流れて辺りを汚す。
そんなに簡単に謝られたら。そんなに簡単に終われるなら。じゃあ、私の奪われた時間は如何なるの？
「本当に、……悪かったと思ってる」
もう、巻戻らないのに。
違う道へ進んだら、其れはもう無に返る？
全部無かった事になるの？
私は、苦しくて、夜も眠れぬ程耐えられなかったのに。
今までの全ては無意味で、無かった記憶で
太宰はもう、他人の事だと、知らない事だと白を切るんだね。
『………、本当に、最低、』
胸に想いが込み上げて、目元に力が篭っていく。
塞がる事の無い傷口で、不完全な瘡蓋が剥がれ落ちた。
零れた言葉が口の中で呼応した。
人を傷つけるには簡単で
私達を引き裂くのも、たった数文字で事足りる。
『消えて』
思っても居ない言葉だって、簡単に紡げてしまう。
だから。
今は、歯を食いしばって耐えなくてはならない。
『一生、会いたくなかった』
此処で泣いたら、私だけがずっと想い続けて居た事、ばれてしまうから。
「………、」
軈て砂利を踏む音が響いて、足音が遠くなる。
ねえ太宰。
私はずっと、苦しくて辛くて寂しかったよ。
太宰は違った？
そう、云えば善いだけなのに。
私が泣くのは、何時だって、大宰の所為だよ。
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました！めっちゃ感動しました！ありがとうございました (3月26日 16時) (
レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
（3）(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです！！なずなの花言葉見て尊敬しました！素敵なお話をありがとうございました！！ (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした！並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました！完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました！ (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…！何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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