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第19話 ページ19

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最初に訪れたのは怒りだった。

顔を見れぬまま、締め付けられる胸を掴んで、喉に溜まった血を吐くように息を吐く。


『そりゃあ、最高だったよ』


焦点の合わぬ目を砂利の転がる脚元に走らせて、私の口は、呆れる様に弧を描く。
本当は、今にも倒れそうな程に脚元が覚束無い。

ぐるぐると回る頭で、断片的な記憶を駆け巡る。


『あんたを起こす為に三時間も早く起きなくて済むし、態々食べたい物を用意する必要も無い。知らない女から嫌がらせを受ける事もないし、それに』

「へえ。私が居なくなって、随分退屈な生活を送ってるみたいじゃあないか」



ドクン、と心臓が、大きく揺れた。

呆気を取られて、動揺して、目を見張る。

退屈?違う。そんな訳が無い。
如何してお前がそんな事を断言出来るの?其れとも、私の顔が、退屈とでも云っていたというのか。



「A」



精一杯の頭の中。リセットする様に呼ばれた名前。

ハッとして思わず顔を上げた先
私を見詰めた瞳と、合ってしまう。


『っ、』


嗚呼、如何して───。

瞳を揺らして直ぐに逸らした。
ドクンドクンと痛い鼓動を抑える為に胸を抑えて。


「……最初は、雰囲気が違うから気付かなかったよ」


優しくて、暖かくて、慈愛に満ち溢れた目が、私の心を狂わせる。如何して。何で今更、お前が、そんな目で私を見詰めるの?

もう、やめてよ。



化粧(メイク)も服装も変えただろう。大人っぽくなった」




もうやめて。これ以上。




「髪、伸びたね」




これ以上。私の人生を、狂わせないで。





『─────近付かないで!!!』





いつの間にか近付いた誰かの影。
私の肩にかかる髪に触れようとした包帯の手が、手前でビクリと固まった。

自分でも驚く位に大きな声だった。
心も身体も、もういっぱいいっぱいで。路地裏に響いた拒絶が消えた頃、残されたのは、私の上がった息の音だけ。

全身の血が一気に流れ込んで、心臓が五月蝿い位に音を立てる。

俯く視線。映る砂色。ぐしゃり、と固まった大きな手。
直ぐ目の前で、誰かが息を引き取った。


「…………、ごめん」


悲しみを煮詰めた様な声で置かれた謝罪。
其の儘すっと離れた手。

違う。私は、そんな声が聞きたかったんじゃなくて。


「……私は、君に酷い事をし過ぎたね」

『……っそんなの、今更』


肩で息をして、ぼやける視界で太宰を見る

唇を噛み締め、拳を強く握りしめて
その顔に。ぎゅうっと、胸を締め付けられた。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 太宰治 , 中原中也   
作品ジャンル:恋愛
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました!めっちゃ感動しました!ありがとうございました (3月26日 16時) (レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
(3)(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです!!なずなの花言葉見て尊敬しました!素敵なお話をありがとうございました!! (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした!並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました!完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました! (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…!何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:高澤白 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2023年2月1日 22時

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