第14話 ページ14
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焼ける様な眩しさで目を覚ました。
朝日に起こされるなんて何年振りだろうか。
ゆっくりと瞼を開けた先には、壁いっぱいに掛かるカーテンと、隙間から覗く太陽が見える。
高級ホテル並に羽の詰まった布団で寝返りを打った。
今日も休暇と云う奴だけれど、私の身体に二度寝と云う選択肢はない。
故にぼうっと薄暗い部屋を眺めて思う。
ヨコハマに帰ってきて、二日目が始まったのか。
『…………今日は何をしよう』
久しぶりに寝過ぎた。六時間位だけど。
そのお陰で重い身体を起こしてリビングへ抜けた。
家主の姿は見当たらない。もうそんな時間か、とペタペタと床を歩いてダイニングテーブルに座った。
───あれから。
中也とは素っ気ないやり取りしか出来て居ないし、その上私は寝台を占拠して家主をソファで寝かせると云う傲慢っぷり。
机の上に置かれた家の鍵と、「何かあったら呼べ」と達筆で走り書かれた電話番号の置き手紙。
中也は何処までも仲間想いだ。
それなのに私は。と、二日酔いで痛む頭を抑えながら猛反省した。
いつもごめん。なのにいつもありがとう。
『……恩返し、しなきゃなあ』
私にとって稀な、至って対等な友人の筈なのに。
中也にはいつもいつも助けて貰ってばかりだ。
時間もお金もあるし、今日くらいは。
『……摘めるものでも作るか』
中也にはあまり出歩くなと云われたけれど、直ぐそこにあるスーパーくらいなら大丈夫。許してくれる筈。
大丈夫。中也が思っている様な事にはならない。
────大丈夫。
之が呪いの言葉にならぬ事を祈って
私は、街へと繰り出した。
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『───あああ、流石に頑張りすぎた。無理だ。如何しよう』
食品だけの買い物から早二時間経過。
専門店を四つハシゴして自分が食べたい物を買いまくった結果、私の両手にはパンパンになった袋が三つ───。
『だって全部魅力的だったんだもん……本当に莫迦』
こういう時、中也の異能力があったらなとつくづく思う。
もう限界寸前の両腕を目の前に石畳の階段がある。
打ちひしがれた私は、その場にしゃがんで、げっそりと項垂れた。
嗚呼、中也、助けて。
恩返しすると見せかけて結局助けて貰うんかいと思いつつ、朝衣囊に仕舞ったメモ書きを右手で漁った。
けれど
『……肝心の携帯を忘れました……』
もう今度こそお終いだ。
がっくりと首を落とした私。
人通りの少ない閑静な場所。
そんな私の肩に、誰かが触れた。
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました!めっちゃ感動しました!ありがとうございました (3月26日 16時) (レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
(3)(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです!!なずなの花言葉見て尊敬しました!素敵なお話をありがとうございました!! (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした!並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました!完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました! (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…!何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました! (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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