丁度いい腰掛けですこれは人間じゃないです ページ7
｢おいこら古神、サボんなー。｣
｢って言って出水もサボりに来たんでしょ。人の事言えないよ。｣
体育館の端で座っていた俺の隣に腰を下ろす出水。
３限の体育はお腹が空く。
皆はどうしてあんなに一生懸命やっているんだ。
しかも球投げだぞ。球を投げて人に当てる遊びに何処が熱中できるのか教えて欲しい。
男のなんて見てらんない、とんでもねぇ豪速球投げる奴いるし。可愛さの欠けらも無いね。
｢ももちゃん女子ばっか見とる。｣
｢こいつ隊でも女子ばっかなのにな。飽きないよな。｣
｢逆に男のドッヂボール見て何が楽しいんだよ。あ、川瀬さん手振ってくれた。振り返そ。｣
｢え〜俺ももちゃんが見てくれてると思って頑張ったのに。｣
｢そうなんだおつかれー｣
｢くそ棒読みじゃねぇか。｣
汗のかいた額を手でパタパタと扇ぐ隠岐もやって来て、何故か俺を１回立ち上がらせてから俺のいた場所に座り、そして俺を膝の上に乗せて更に背中にのしかかってきた。
｢隠岐…暑いんだけど。｣
｢んな、今日の気温はにじゅう……忘れたわ。｣
｢気温の話じゃなくて、離れろって。｣
ぐい、と押してもビクともしない隠岐。
出水に目を向けたら両手を上げていた。何も出来ないってか。
｢隠岐くーん。暑くてしんじゃう。｣
｢仕方ないな…これ、海が使っとった小型扇風機。｣
｢うお、なにこれすげぇ！涼しい！｣
｢いやそれなら離れなくてもいいんかい。｣
出水の言葉を他所に俺は小さな扇風機のボタンをカチカチ鳴らしてその素晴らしさに感動していた。
｢隠岐、お前俺専用の青狸になってよ。｣
｢ド〇えもんの事そんな言い方すんなよ。｣
｢ももちゃん専用とかええ響きやな〜。｣
｢あれ、俺お邪魔な感じ？え？｣
｢あ〜隠岐君が古神君の事ぎゅーしてる〜。｣
｢古神君可愛い〜。｣
｢どっちも羨ましすぎ。｣
あれ、女子達集まってきた。
｢隠岐は今俺の専属青狸で、俺にこのちっちゃい扇風機くれたんだ。そして彼自身は快適な椅子と化した。｣
｢なにそれー写真撮っていい？｣
｢いいよ。｣
｢癒しゲット〜。｣
俺と隠岐はサービス精神が良いのでちゃんとピースをしてあげた。
｢あ、須藤俺もその写真欲しい。｣
｢出水は駄目。てか写るどいて。｣
｢え、理不尽。｣
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作者名：ゆっけ | 作成日時：2022年11月10日 19時
