【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

＿01 ページ18

仕事納め祝いに、と奮発して入ったイタリアンのお店で、私達は奥まったテーブル席に案内された。


「やだな、なんか俺、緊張してきちゃったよ」


脱いだコートを背もたれに掛け、坂田は顔をしかめてそんなことを言った。

冗談なのか、本音なのか。

坂田は真顔でふざけるから、よく分からないことがある。


「なんでよ」

「だって、俺、イタリアンなんて全然食わねェんだもん。そもそもイタリアンってどんな料理なの？食えるの？」

「最後の質問、おかしいよね」


ウェイターさんの運んできてくれた温かいおしぼりで手を拭きつつ、答える。


「イタリアンって言ったら、あれだよ、パスタとかピザとか、あとミネストローネとかだよ」

「あー、なんだ、例の給食か」

「給食の一言で片付けられるとしっくり来ない気もするけど……まあ、間違ってはないね」


メニューを広げて、どれにしようかと覗き込む。


「なんだ、この、訳分かんねェカタカナの羅列」

「……私もそれちょっと思った」


どうやら、この店は割と本格的なイタリア料理の店だったらしい。

首を捻っていると、銀さんもうタジタジだよー、とメニューを見るのをやめる坂田。


「もう、先輩に全部任せるわ。俺の分、適当に選んどいて」

「ちょ、ちょっと、匙投げないでよ。私もよく分かんないんだから」

「マジかよ、先輩にも分かんないとか、もうお手上げじゃん」

「でも、ここら辺は分かるかも。ほら、カルボナーラとか、マルゲリータとか……あとは……」

「あ、俺もそれ知ってる！」


坂田が嬉々として大きな声を上げると、向こうのテーブルの紳士淑女たちが何事かとこちらを見た。

注目されていると坂田も気付いたのか、わざとらしく咳払いをし、声のトーンを落として言う。


「……じゃ、俺はカルボナーラにする」


いじけたような口調に、つい笑ってしまった。

＿02→←４．終止符を打って

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す