【銀魂】五回目の乾杯で酔えば【坂田銀時】

１．それは突然に ページ1

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……なんだって、今年のクリスマスイブは日曜日なんだよ。


ビールを呷り、俺はまたしてもそんな愚痴を溢した。


……独り身の日曜日なんて、やることねェし、どこか行こうにもカップルがうようよしてやがるしよ。


「……日曜なんざクソ食らえってんだ」


そう吐き捨てれば、ヒクッとしゃっくりが出た。

すると、隣に座っていた同じ部署の先輩が俺の方に顔を寄せて、


「ええ？なあに？坂田、何か言ったー？」

「……なんでもないっす」

「んだよ、なんでもないのかよ。……あー、やってらんない」


先輩は普段とはかけ離れた乱暴な口調で何やら愚痴っぼいことを呟きながら、ドボドボとビールを注ぎ足していく。

……あれ、それ俺のジョッキじゃね？

酒の回った頭で気付き、俺は先輩に声をかけた。


「……先輩、それ、俺のジョッキっすね」

「あん？何だって？」


ドスの効いた声に、よく考えてみりゃ、ジョッキなんかどれだって同じだよな、なんて思った俺は、「やっぱ何でもないっす」と左手を振った。



───『クリスマスイブは独り身同士集まって飲もうぜ』なんて、みすぼらしい誘い文句とは、今年は無縁だと思っていた。

というのも、ついこの間まで俺にも彼女がいたからだ。

……そう、一昨日までは彼女だったんだよ、アイツが。

先週の今頃は、その彼女と飲んでいたはず。


『イブは日曜日だしさ、私の手料理披露してあげよっか』。


俺は馬鹿みたいに何度も首を縦に振って、どんなサプライズを用意してやろうかとか、ソイツの嬉しそうな顔とかを頭の中に思い描いてて。

お前は今年も寂しい夜を過ごすのか、と腹の立つことを言ってきたヅラに舌を出してやりたい気分だった。

なのに。


『私達、縁が無かったみたい』。


そんな訳の分からない台詞で、俺とソイツはただの他人になってしまった。


……縁ってなんだよ、有るも無いも俺にはそんなの一度も見えたことねェよ。それに、俺ァその漢字は“緑”と間違えそうになるから嫌いなんだよ。


いくら心の中であの時の彼女をなじろうとも、「やっぱこの前のは無しね」なんてLINEもメールも電話も来ない。

とすると、今頃アイツは、“縁があった男”と笑い合っているのだろうか。

そう考えると、『独り身同士で飲む会』に半強制的に参加させられている自分がひどく惨めに思えてきた。

両隣の先輩はタイプじゃないし、目の前に座ってる同期の男は泣いてるし。


……何してんだろ、俺。


ふいに賢者タイムみたいなモンが訪れて、


「……俺、気分悪いんで帰ります」


野口を財布から出して、俺は席を立った。

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