募る不安 ページ7
さとみside
朝起きたら腕にいたはずの温もりがなくて。
一瞬焦ったけど、寝室まで届くいい匂いに、台所にいることを把握する。
メガネをかけて、小さく伸びをしながらリビングに向かえば、卵焼きを前に独り言を呟く彼女の姿があって。
___良かった、元の姿だ
と1人安心して後ろから抱きしめた。
驚いた顔をしていたけど、優しく目を細めて俺を見るその姿に触れるだけのキスを落とせば。
顔を真っ赤に染めて目を逸らすから。
___そういう所が可愛いんだよな
照れている姿に満足して、Aが作ってくれた朝食をテーブルに運んだ。
「そういや、体調大丈夫?」
「え?うん、平気だよ」
「ほんとに?昨日辛かったからあの姿だったんじゃないの?」
「少し疲れてただけだよ。たくさん寝たから大丈夫」
心配しないで?と微笑む彼女に、苦虫を噛み潰したような気持ちになる。
___少し触っても起きなかったくせに。
あの姿の方が楽なんだろうけど。
でもそれは。
いつか戻れなくなる前兆のような気がしていて。
前よりも、あの姿になることも、長時間その姿でいることも増えた気がするから。
「桃里くん?」
黙り込んだ俺を不安そうに見つめて首を傾げるAに。
「無理すんなよ。何かあったらすぐ言うこと」
俺の嫌な予感を悟られないように、その頭を撫でれば。
気持ちよさそうに目を細めて微笑んだ。
募る不安
(お前は知らないんだろうけど)
(そういう仕草があの姿に感化されているんじゃないかって)
(俺は不安で仕方ないんだ)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時