白に滲む黒 ページ39
さとみside
それから数年、Aが成人して、一緒に住み始めて。
仕事をしながら、俺は演技の道に、彼女は音楽の道に進んだ。
____桃里くんと同じ、髪色にしてみようかな
ぽつり、とこぼしたAの姿に。
綺麗な髪に手を加えてしまうのは、正直気が引けたけど、それに苦しんでいた彼女の姿を知っていたから。
____一緒に染めに行くか
髪を染める前と染めた後に、2人で記念写真を撮った。
そして、ネット活動を始めた俺を、彼女は1番に応援してくれた。
七瀬さんに会って、他の奴らと出会って。
すとぷり、を結成して。
加入を断り続けたAを何度もアプローチして仲間になって、一緒に活動し始めて。
心ない言葉やアンチに傷付いて。
全てに、絶望したこともあった。
けど、Aがいたから、仲間がいたから、頑張れた。
特に彼女は、俺の存在意義だった。
幸せ、だった。
毎日楽しくて、幸せで。
だから、忘れてたんだ。
いつも通りの、朝だった。
いつものようにリビングに行く。けど、電気はまだついていなくて。
何時もなら俺より早く起きているのに。
不信感を覚えて、彼女の部屋に行く。
ノックしても反応はなくて。
入るよ、と声をかければ、ベッドで毛布に包まる彼女の姿。
近づいてわかったのは、啜り泣くような声を出しながら、震えていたこと。
____A?
そっと肩に触れれば、びくりと体を揺らす。
それを見て毛布を外そうとした瞬間、
____っダメ!!
大声で、拒否した彼女に驚いたけど。
いつもと違う彼女に、嫌な予感がした。
____ごめん
少し無理矢理その毛布を取れば、慌てて俺から取り返そうとするから、その手をとる。
彼女の目は真っ赤に腫れてて。痛々しくて。
____どうした?
傷付けないように。
唇を噛んで、黙り込む彼女に、血が出ちゃう、と唇を優しく撫でれば。
彼女が、口を開いた。
____現れた…
____現れた?何が?
その言葉の意味が分からず聞き直す。
その次に彼女の口から飛び出た言葉に。
____護り猫の、刻印…っ
なんで、と震えながら、泣き崩れる彼女が、消えてしまいそうで、壊れてしまいそうで。
怖くて。
____俺がいるから。ずっといるから
Aがここにいることを確かめるように、その温もりを感じたくて。
優しく、でも強く、抱きしめた。
白に滲む黒
(非日常へ)
(Aと俺の運命が)
(180度変わった、そんな日は)
(あの話に出てくる)
(嵐のような日だった)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時