呪いへと返り咲いた ページ36
嵐の前日、当主は他の村まで出掛けておりました。
本当はすぐに帰るつもりでしたが嵐がやってきて。
1日長く、その村に滞在したのです。
「今戻った」
戸を開けても、しん、とした家に、眉を顰めます。
何時もなら雪が玄関に迎えに来るのに
不審に思い、彼女の名前を呼びます。
けれど、それに対する返答はなく。
最後に来たのは、彼女の部屋でした。
そこにあったのは
_____申し訳ありません
そんな言葉と、彼女が好きな白く小さい花で。
当主を笑顔で見送った彼女は、それを最後に姿を消してしまったのです。
その日から当主は姿を見せなくなり。
心配した幼馴染が見に行くと、いつもの凛々しい面影はなく。
見るも耐えないほど弱り切った当主の姿に、幼馴染はそっと抱き締めました。
久しぶりの人の温もりに
「私がいる。ずっと傍にいるから」
堕ちるのは、時間の問題でした。
幼馴染の優しさに溺れ、初めて、体の関係を持った、その日の夜。
す、と何かが枕元に現れる気配に、当主の意識が浮上しました。
そこに座って居たのは、
「___せ、つ…」
姿を消した、彼女の姿で。俯いて流れる長い前髪で、その表情は読めなくて。
その姿を抱きしめたかったけれど、身体は動かなくて。金縛りにあったかのようでした。
___愛してた
黙っていた彼女が、ボソリと呟きます。
___あの日助けて貰った日から、ずっと
あの日、とは嵐の日のことだろうか。聞きたいけれど、口を開くことは叶いません。
___嵐の日よりも前、祠で弱っていた私を、貴方は助けてくれた
当主の思考を読んだように続いたその言葉に、衝撃が走ります。
祠の前、そこで弱っていたのは突然姿を消した、あの白い仔猫で。
なぜ、気付かなかっのか。その白い綺麗な髪も、透き通る蒼眼も。あの仔猫と同じだったことに。
___これから先も、貴方と生きたかった
___なのに、私は殺されてしまった
“殺された”?誰に?
___あなたを愛してた
いつの間にか、白い猫耳と尻尾が現れていて
ゆらり、と揺れます。
手を伸ばして、触れたいのに、体が言う事を聞かなくて。
___なのに…許さない
眼を紅く染めた雪が当主の唇にキスを落とせば。
___永遠に
彼女が消えると、体は自由に動くようになり、急いで起き上がりました。
そこにはあったのは、ひとつの黒い花でした。
呪いへと返り咲いた
(イチゴの花言葉は)
(尊重と愛)
(幸せな家庭)
(クロユリの花言葉は)
(愛)
(呪い)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時