むかしむかしの ページ34
むかしむかし、とある村に小さな祠がありました。
そして、その祠を護る一族がありました。
当主は、それはそれは見た目麗しく、頭脳明晰でとても強く、それでいて優しく温かい方でした。
その人柄ゆえ村人達には慕われ、求婚する女性も多くおりました。
けれど、当主は祠を護ることを最優先としていたため、全て断わっておりました。
ここまでしてでも、祠を護る理由。
祠には、とある土地神が祀られていて。
それに引き寄せられるように、白い仔猫が住んでいたのです。
その仔猫は真っ白な、美しい毛並みを持ち、綺麗な蒼眼をもつ、仔猫でした。
初めは弱っていたその仔猫は、発見した当主が甲斐甲斐しく世話をし、直ぐに元気になりました。
そして、当たり前のように、当主に懐いたのでした。
人だけでなく、動物にも優しい当主は、その仔猫を大層可愛がっておりました。
そして、数ヶ月後。仔猫が、いなくなってしまいました。
当主は、それはそれは悲しみましたが、その仔猫にも仔猫の生活がある、気まぐれなところが猫らしい、とどこかへ旅立って行った仔猫に、加護があるよう祈りながら、祠を護り続けました。
子猫が居なくなって、数ヶ月が経った時。当主の家の戸を叩く者がおりました。
その日は嵐で、雨も風も強く、外に出れるような状況ではありませんでした。
不思議に思った当主が得物を手に戸を開けると、びしょ濡れの女性が立っていたのです。
雨で濡れた真っ白で綺麗な長い髪の毛に、蒼眼の伏し目を縁どる長い睫毛、病気なのではと間違えてしまいそうなくらい白い肌は、キメ細やかで。
「突然、申し訳ありません…道に迷ってしまった中でこの嵐にあってしまいまして…少し休ませて頂くことは可能でしょうか?」
鈴のなるような、透き通る声でした。
「それはそれは、大変だったでしょう。どうぞお上がり下さい。直ぐに拭くものと着替えを用意させましょう」
真っ直ぐと見上げるその瞳にそう返せば、
「ありがとう、ございます」
返ってきたのはお礼の言葉と、
ふわり、と優しい笑みでした。
むかしむかしの
(それは奇跡のようで)
(必然的な、出会いだった)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時