理解不能な言葉 ページ18
ななもり。side
「「は?」」
桃里くんの口から出た言葉に、俺も橙瑠くんもこの一音しか出なかった。
____もう、そんなに永くないかもしれません。
笑えない冗談だ。
いや。この場で冗談を言えるほど、目の前の男は馬鹿じゃないことは知っている。
「どう、いう…A病気かなんかなん?」
「これ以上は俺の口から言えない。…けど、病気じゃない。それは確かです」
「病気じゃないならなんで…!」
「………ごめん、これ以上は本当に俺から言えない。アイツに許可を取らないと、言えることじゃ、ない…」
「一切笑えないんだけど、さ…冗談、じゃないんだよね?」
「この場で冗談が言えるほど、俺はできた人間じゃないですよ」
苦笑いと涙を浮かべる桃里くんの姿に、ようやくこの事実が本当なんだと、理解する、
病気じゃない。
けど、
並んだ言葉の、理解ができない。
「意味分からない、って顔してますね」
「そりゃ、分かるわけないよ。意味分からなすぎて理解不能だよ」
「ほんまになんなん….どういうこと?」
「そのままだよ。だからこそ俺はAをここに、俺の側に留めておきたい。手放したくない」
____俺は、あの時無力だったから
俯いて手を握りしめる桃里くんに、どういうことか、尋ねようとして。
にゃーん
小さく聞こえた鳴き声に、出かかった言葉を飲み込んだ。
がばっ、と顔を上げた桃里くんが向けた視線を辿ると、小さくて白い、毛並みの綺麗な子猫が、閉めたはずのドアの隙間から、その碧い綺麗な瞳をこちらに向けていて。
「ゆき、」
ぽつり、と呟いた彼の元へ子猫は走り寄り、膝の上から肩へ乗ったかと思えば、頰を流れる彼の涙を、泣かないで、というように優しく舐める。
そんな子猫に桃里くんは優しい、愛しいものを見るように目を細めた。
「…桃里、白い子猫なんか飼っとったっけ?」
「え、あぁ、まぁ」
「ユキちゃん、って言うの?」
「………そう、ユキ、です」
桃里くんに抱きかかえられた子猫____ユキちゃんを撫でると手に頭を擦り寄せて喉を鳴らす姿に、思わず笑みが溢れて。
さっきまでの重い空気が嘘のように霧散された、気がした。
橙瑠くんもユキちゃんの綺麗な毛並みを撫でて、小さく笑っていて。
だから、気付かなかった。
桃里くんが不安そうな顔をしていたことに。
理解不能な言葉
(子猫の澄んだ碧い瞳に)
(どこか感じた既視感が)
(なんとなく気になった)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時