検索窓
今日:14 hit、昨日:5 hit、合計:16,562 hit

理解不能な言葉 ページ18

ななもり。side


「「は?」」


桃里くんの口から出た言葉に、俺も橙瑠くんもこの一音しか出なかった。


____もう、そんなに永くないかもしれません。


笑えない冗談だ。
いや。この場で冗談を言えるほど、目の前の男は馬鹿じゃないことは知っている。


「どう、いう…A病気かなんかなん?」

「これ以上は俺の口から言えない。…けど、病気じゃない。それは確かです」

「病気じゃないならなんで…!」

「………ごめん、これ以上は本当に俺から言えない。アイツに許可を取らないと、言えることじゃ、ない…」

「一切笑えないんだけど、さ…冗談、じゃないんだよね?」

「この場で冗談が言えるほど、俺はできた人間じゃないですよ」


苦笑いと涙を浮かべる桃里くんの姿に、ようやくこの事実が本当なんだと、理解する、


病気じゃない。
けど、未来(さき)が永くない。


並んだ言葉の、理解ができない。


「意味分からない、って顔してますね」

「そりゃ、分かるわけないよ。意味分からなすぎて理解不能だよ」

「ほんまになんなん….どういうこと?」

「そのままだよ。だからこそ俺はAをここに、俺の側に留めておきたい。手放したくない」


____俺は、あの時無力だったから


俯いて手を握りしめる桃里くんに、どういうことか、尋ねようとして。


にゃーん


小さく聞こえた鳴き声に、出かかった言葉を飲み込んだ。

がばっ、と顔を上げた桃里くんが向けた視線を辿ると、小さくて白い、毛並みの綺麗な子猫が、閉めたはずのドアの隙間から、その碧い綺麗な瞳をこちらに向けていて。


「ゆき、」


ぽつり、と呟いた彼の元へ子猫は走り寄り、膝の上から肩へ乗ったかと思えば、頰を流れる彼の涙を、泣かないで、というように優しく舐める。
そんな子猫に桃里くんは優しい、愛しいものを見るように目を細めた。


「…桃里、白い子猫なんか飼っとったっけ?」

「え、あぁ、まぁ」

「ユキちゃん、って言うの?」

「………そう、ユキ、です」

桃里くんに抱きかかえられた子猫____ユキちゃんを撫でると手に頭を擦り寄せて喉を鳴らす姿に、思わず笑みが溢れて。
さっきまでの重い空気が嘘のように霧散された、気がした。


橙瑠くんもユキちゃんの綺麗な毛並みを撫でて、小さく笑っていて。


だから、気付かなかった。
桃里くんが不安そうな顔をしていたことに。


理解不能な言葉

(子猫の澄んだ碧い瞳に)

(どこか感じた既視感が)

(なんとなく気になった)

新たな刻印→←固く閉ざされた蓋が開く



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (10 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
15人がお気に入り
設定タグ:すとぷり , stpr
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。