固く閉ざされた蓋が開く ページ17
さとみside
「で、何が聞きたいんですか」
2人にそう聞くけど。自分で言うのもわざとらしい。
聞きたいことなんて、分かりきってるのに。
「遠回しに聞いてもきっと答えてくれないんだろうから、ど直球に言わせてもらうね。
………桃里くんとAちゃんは一体何を隠してるの?何に苦しんでるの?俺たちには言えないことなの?そんなに頼りにならない?」
「紫杜くん一気に聞きすぎちゃう?」
「こうでもしないと答えないでしょ」
まくし立てる様に話す七瀬さんに、ストップをかける橙瑠。
だけど、今日は逃さない、と言わんばかりに七瀬さんは本気で。
この2人だけじゃない。こども組の3人も、信用・信頼に値する人達だって、十分すぎるほどに知ってる。分かってるんだ。
だけど、これは俺だけの問題じゃないから。
むしろ、アイツの問題だ。
メンバーにバレたことを知れば、きっと自分を責め続ける。最悪の場合のことだって、アイツならやりかねない。
それに、ただでさえ不安定な状態のアイツを、これ以上苦しめたくない。
なのに。
俺が口を開くのを待ってる2人を見れば。
そこにはメンバーとしてではなく
“友人”としてある2人がいて。
この人達に隠し事をしていることが
積み上げられていた罪悪感が
全てを箱に詰めて、2人で抱えて
蓋を固く閉ざしたのに。
「………そんな目で見ないで下さいよ。ずるい」
人前で泣くなんて、ましてや自分のことで泣くなんてなかったのに。
一筋、二筋と頰を伝う冷たい感覚に。
この2人はいとも簡単に、その蓋を開けてしまった。
「これは、俺のことじゃない。アイツの、A自身のことだから。俺の口からは言えません」
「どういう「でも」うん」
「アイツをこれからも支えてやってほしい。こんなこと考えたくないけど…いつ消えるか、いなくなるか分からないから」
俺の言葉に頭に?を浮かべている七瀬さんと橙瑠。それを見ながら、俺は言葉を続けた。
「橙瑠、今日Aが痛がってたのどれくらいの時間か分かる?」
「え?せやなぁ…大体10分位かな」
「そっか…今はまだその時間が短いけど、たぶん…。元気に振舞ってるように見えるけど、体調不良も続いてて、ご飯もあまり食べれてない。
____もう、そんなに永くないかもしれません」
静かな空間に、ひゅ、と2人が息を飲むのが分かった。
固く閉ざされた蓋が開く
(自分で言い放った言葉に)
(改めて闇に侵食されるような、感じがした)
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風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時