震える手 ページ15
ジェルside
「なんで、ここに?」
「トイレ行こう思って、廊下出たら明かり漏れとって。ドア開いとって、今の状態やで」
ヤバイ、という表情と困惑が混ざったような表情で聞いてくるAにそう返せば。
やってしまった、と絶望的な感情をその目に浮かべた。
「体調悪いん?どこか痛むん?なんで言わんかったん?」
「…大丈夫。もう大丈夫だから。ごめんね」
俺の質問に答えずに、ゆっくりと起き上がってにこり、と笑顔を浮かべるAに。
その笑顔が無理しとるのが丸わかりやから。
なんで言ってくれんのやろ、仲間やないん、とイライラが募る。
せやけど、今ここで問い詰めてもきっと全く口を割らんやろうから。
はぁ、と重く息を吐いた俺に、びくり、と体を震わせる。
怒ってると思ってんねやろ?怒っとるよ。
でも、言わんやろ。やったら今はまだ聞かんでおくよ。
ぐ、と引き寄せていわゆるお姫様抱っこ状態にすれば、目を見開いて、状況が分かったのか、降ろして、とバタつく。
「どうせ今聞いても答えないやろうし、聞かんから。力入らんのやろ。ベッドまでやから、落ち着いてや」
「うぅ…ごめんなさい」
「ごめんよりも俺はありがとうのが嬉しいなぁ」
「…ありがとう、橙瑠くん」
「どういたしまして」
俺の胸に顔を埋めながらぼそり、と呟くAに小さく笑ってそう返せば。
「みんなには…桃里くんと紫杜くんには、言わないで」
涙目で見上げてそう言うから。
あ、この2人は体調悪いこと知っとったんや、と理解する。俺らにも言うてくれればええんに。
「そう言うわけにはいかんよ」
「っ、お願い…」
そ、っとAの部屋のベッドに降ろした俺の袖を掴むその手は小さく震えとって。
「…分かった」
そう言うと安心したように笑ったけど。
その頰には、つぅ、と一筋涙が流れた。
震える手
(そんな絶望的な顔をして)
(言わないと言えばホッとした顔をする)
(何を隠しとるのか知りたいけど)
(知ったらどこか)
(遠くへ消えてしまう気がした)
*・゜゚・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
皆様台風は大丈夫ですか?
自分の命が第1です。
無理などなさらぬよう、本当にお気をつけ下さい…!
2019.10.12 風雅
15人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
風雅(プロフ) - ゆあさん» 初めまして。コメントありがとうございます。少しずつですが、更新できるように頑張らせて頂きます。今後ともよろしくお願い致します! (2019年10月12日 9時) (レス) id: 4353acba07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあ(プロフ) - 更新楽しみに待ってます!!頑張ってください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: ae1b37537f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:風雅 | 作成日時:2019年10月2日 16時