【鬼滅の刃】扇は月下で煌めきて【童磨】

昔々　二 ページ24

「ねぇ、君だれ…？」

「……。」


その日はなかなか寝付けなかった。
夜風に当たろうと寝間着のまま庭に出たとき、そこには先客がいた。

濃い碧の着物を着た、十五、六くらいの少女だった。
漆のように黒い目が、白く長い髪によく映えていた。美しいとも可愛らしいともとれる顔立ちで、何処か浮き世離れしているような雰囲気をもっている。こんな信者はいなかった。白髪の少女なんて滅多にいない。信者の中にいたら絶対に覚えているはずだ。

彼の問いかけに少女は応えなかったが、その容姿から彼はとある考えに至った。七つ程度の普通の子供が考えもしないような答えだった。


「もしかして、父上の愛人か何か？無理矢理関係を持たされた末に捨てられちゃったのかな？僕がお話を聞いてあげるよ」

さすがのこれには少女も驚いたらしく、目を見開いて彼を見た。心なしか日焼けを知らないような白い頬をすこし紅くしている。暫くして溜め息をつくと、その口から風鈴ように静かで落ち着いた声をだした。

「童とは思えぬことを言うな、お主…」

何処かのお姫様のような凛とした口調は、儚げな容姿には一見似合っていないようだが、割りと様になっていると彼は思った。


「ほら、外は寒いよ？僕の部屋においで。ゆっくりお話ししよう？」

少女は何か考えたあと、こくりと小さく頷いた。

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