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b.08 ページ24

「君さぁ、連絡なしで来るのそろそろやめてくれませんかね?」

『別に良いでしょ、恋人なんだし』

「じゃあその恋人の前なんだからもうちょっと可愛こぶってくだされ。あとそれ拙者のじゃがりこ」

いやいや、私がこれ以上可愛くなったら先輩死んじゃうんで。

可愛いくてごめん。

じゃがりこ食べてごめん。

『そんなことより、次のデートどこ行きます?もうデートスポットは大分行き尽くしましたよね』

「あ〜それなんだけど。次さ、“嘆きの島デート”とか、どっすか」

ん?

何言ってるのこの人。

『大丈夫?頭燃えすぎてついにイカれました?なでなでする?』

「A氏ったら煽りすんごい強烈じゃん。流石拙者の彼女」

『お褒めに預かり光栄です』

そうじゃなくて、と先輩。

「両親に会ってほしいんですが」

『へ』

思わず手に持っていたじゃがりこがぽとりと落ちる。

「ほ、ほら僕らまぁまぁ付き合いも長いし?親がそろそろ会っておきたいと申してる」

『…でも、私大した仕事してないし、戸籍も無いし、魔法も使えない。正直ガッカリされちゃうよ』

これといった特技もないし、家庭的でも、特別賢くもない。

所謂どこにでもいる凡人。

そんな自分が、良いとこのお家のご両親とコンニチハとか流石にきつい。

「大丈夫、別に向こうも単純に君のことを心配してるだけですし。」

いずれ家族になる可能性があるわけだし…と付け足す。

『うーん、構わないけどほんとにどうなっても知らないからね?』

息子はやらん!とか言われても私は責任とらないよ?

「じゃあ決定ね。誰も君が傷つくことは言わないし、まず僕が言わせないから安心してくだされ。」

『やだかっこいい』

人と会うならお洋服も新調しないとだな。

そういう意味では少し楽しみかも。

むふ、とじゃがりこを頬張る。

『ねぇ先輩、ゲームしましょ』

「君も懲りないね。どうせまた負かされるだけですぞ」

『今日は格ゲーで勝負です』

拙者に格ゲー挑むとか身の程知らずすぎw、と鼻で笑われる。

違うの。

別に勝ちたいんじゃないの。

イデア先輩とこうして時間を共有できることが一番なの。

貴方をひとりじめできることが一番なの。

でも私、素直じゃないからそれは言えない。

『先輩、こっち向いて』

言わない代わりに少し強引に、唇を重ねた。

「…A氏の癖に生意気」

少し頬を紅くする恋人。

『なんとでも言いなさい〜』

「絶対泣かせる」

そうして、今日も私達の長い夜が始まった。

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作者名:Matyu | 作成日時:2023年9月19日 21時

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