b.02 ページ18
ひとしきり楽しみ、影が少し長くなってきた頃。
「ねぇwwwびしょ濡れなんだが」
『嫌がらせレベルの水量っすねww』
子供の様にはしゃぎ合う成人済みの二人。
『ふふっ、じゃあそろそろお店入りましょうかね?』
「流石に水滴らせて入るのはどうかとww少し休憩しよ」
飲み物買ってくるね、と先輩。
なら私少しお手洗い行ってきます、と話しそこを後にした。
実は一つ気になることがある。
今朝到着した時から、いやそれより前から足にずっと痛みがあるのだ。
ベンチに座って確認してみると案の定ソックスに血が滲んでいた。
『慣れない靴なんて履くもんじゃないね…』
今更反省しても仕方がない。
午前はテンションと真実の愛で痛みも麻痺していたが、流石に午後まではもたなかった。
男子校出身なため絆創膏なんぞも持っておらず、途方に暮れる。
『先輩〜ちょっと遅くなりそうなので先行ってて下さい!すぐ向かいますのでご心配なく』
スマホをポチポチしてはため息を吐く。
デートだって張り切っていたのに、靴擦れだなんて面目ない。
気合いで行くか?でもこれはちょっとな〜、足元をちらっと見ると白い布地に赤黒い色が目立つ。
イデア先輩からのレスが届く。
「どうしました?なんかあった系?」
返信に一瞬迷うも、結局スタンプで誤魔化した。
考えてみれば酷い女ではないか。
自分で誘いに乗った癖に現在同伴という役目は果たせていない上に、心配に対して誤魔化しで返すという。
『ダサすぎる…』
傷は未だえぐる様に痛み、私の気分をとことん沈める。
この時期は日が傾く速度が異様に速く、思考している間にももう夕方と呼べる時間になってきた。
赤くほんのり温かい夕日が頬にかかる。
遠くで聞こえる明るい音楽でさえ、この時の私にはどこか寂しげに聞こえた。
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作者名:Matyu | 作成日時:2023年9月19日 21時