a.09 ページ16
待ちに待ったイデア先輩との
この前の一件があってから、先輩とは一度も会っていない。
怒りの感情は既に失せ、今では焦りと気まずさしか残っていない。
『な〜んであんなこと言っちゃったんだろうな』
この日のために新調した服が水を吸った様に重い。
そして、どこか不安を抱えながら家を出た。
『お、お待たせしました…』
「あっ、全然待ってないデス。ハイ」
イデア先輩と合流しても、緊張は解けるどころか強まるだけ。
「きょ、今日はよろしくお願いします…」
ぎこちないままどちらからとも無く歩き始めた。
無事入園し、何も話さないのも変かなと思い口を開いた。
『…今日はその、どんなルートで回る予定ですかね?』
「反時計回りのルートで午前中に軽食系のコラボメニュー巡ってお昼時アトラクで夕方主食系メニュー…でどうっすかね」
『把握です、というか先輩そんな食べれるの?』
「A氏食べて」
どんだけ肥えさせる気だ。
『あ、あとコラボ目当てで来たのにアトラクションも乗っちゃって良いんですか?』
「ええっと、ご飯食べて写真撮るだけじゃ君はつまらないかなって思って、」
嫌だったら変えますし…と私の顔を覗き込む先輩。
『え、なにそれ優しい好き。』
「は?」
『あばばばばばbえっと気を遣ってもらっちゃってごめんなさい!嬉しいです』
ミスったミスったミスった。
てかあんたといれるんならつまらないわけが無い。
「そ?なら良きです」
そう呟き少し安心した様な表情を見せたのも束の間、
「はっ!あれは拙者の推し殿のパネル!衣装チェンジもしてるし流石に撮影しなきゃヲタ失格!!!」
と通常時からは考えられないスピードで駆けて行った。
『ちょ!待ってよ!』
そこからの時間はとても楽しかった。
パーク内の至るところにある無数のパネルと写真を撮ったり、意味わからん色のドリンクを飲んだり。
何よりイデア先輩の純粋な笑顔を隣で眺められることが嬉しかった。
しかも合法。
しかも無料!!
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作者名:Matyu | 作成日時:2023年9月19日 21時