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十七説。 ページ19

空気が薄い。
意識が、もうもたない。


零さん、また怒るだろうな。
いや、もう心配されないのかな。酷いこと言っちゃったし。
嫌だな、嫌だ。
せめて零さんに謝ってから死にたい。


西「A?死んじゃうよ?良いの?」

『う“ぇ…ヒュッ…ッ…こ、の…』

西「なあに?聞こえない」


目の前の男は、余裕の表情で俺の顔を覗き込む。
それと同時に手の力が緩み、一気に空気が入ってくる。

『ゴホッゴホッ…ッ』

西「Aが僕に、“あいつとは別れます、翔さんのものにして”って。
そう言うだけでいいんだよ?
そんな簡単なことも言えないのかなぁ、この口は」


片手で頬を掴まれ、無理矢理顔を上げられる。

知らない。
こんな奴、知らない。


『っ…はな、せよ…このクソ野郎ッ!…ガハッ』

西「なんて〜?聞こえないなぁ」

拳で殴られて、口の中が切れて血の味がする。
痛みでさっきまで朦朧としていた意識がはっきりしてきた。

そうだ、このままじゃ危ない。

なんとかして逃げなければ、



西「あぁ、可哀そうに…」

『んう“!?っふ…うっ、んっ』

西「ん…Aの血の味だ……っ!?」


油断して唇を合わせてきた西村先生の舌を噛んで、驚いた拍子に蹴って距離を取った。
俺は急いで鞄に入ってる携帯を取り出し、電話を掛けた。

『ハァ…ハァ…ッ!こっちに来るな!』

西「A、何をそんなに怒っているの?
俺は君の為を想って言ってるのに」

『俺の、為…?』


西村先生は机にもたれかかり、こちらを見据えて淡々と続けた。

西「彼、同性愛者じゃないんだろう?
限界があるんじゃないか?薄々、君も感じている頃だろう」


そんなことはない。
とは言い切れない自分が居る。
零さんは俺に合わせて無理している、そんな気もする。


でも、彼はそれでも俺を選んでくれた。

危険だとわかっていても、俺に秘密を打ち明けてくれたんだ。



『…お前に心配される筋合いはない。
俺は彼を信じているし、これからも一緒にいる、

お前のものになんて、ならない!!』



俺は震える肩を抑えながら、目の前の男を睨んで叫んだ。

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ごまめんま。(プロフ) - りらちむさん» 読んでいただきありがとうございます(*^^*)作者の好みで切甘に寄りがちです(笑) こんな感じですが、これからもよろしくお願いします( ;∀;) (2019年8月18日 19時) (レス) id: 21ddb629a5 (このIDを非表示/違反報告)
りらちむ(プロフ) - やばい、ふつうに泣きそうになりました。最高です。 (2019年8月18日 2時) (レス) id: 75c68e6b22 (このIDを非表示/違反報告)
ごまめんま。(プロフ) - いおりさん» 温かいお言葉、ありがとうございます(´;ω;`)頑張って語彙力伸ばしつつ更新に努めます('◇')ゞ (2019年6月23日 16時) (レス) id: 21ddb629a5 (このIDを非表示/違反報告)
いおり - とても面白かったです。お忙しいとは、思いますが更新、頑張ってください。これからも応援しています (2019年6月22日 23時) (レス) id: 72842f6fe9 (このIDを非表示/違反報告)
ごまめんま。(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!すぐ確認して参ります (2019年6月21日 7時) (レス) id: dd15d2a8cf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ごまめんま。 | 作成日時:2019年6月20日 17時

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