光兆《SixTONES》

" 初めまして ページ10

北斗





“午前中に頭痛で運ばれてきた女の子、孤児院かららしいわよ”
“まだ中学生だって。可哀想に”


もうすぐで研修医期間が終わるという頃に
ナースステーションの前で聞こえたこの会話。


孤児院。つまり両親が居ないのだろうか
また運ばれる程の頭痛となると、考えつく病名は限られる。

たしかに可哀想だな。可哀想




ただ何故かその言葉がとても不愉快で、腹立たしくて
当時の俺は、なんの力も無いのにその看護師を一瞥した。






それから三日ほど経った日に
自分を指導してくれていた藍沢先生から
Aのカルテを見せられたんだ。








北「......小児癌、ですか。」


藍「ああ。血液のデータを見たら分かるが、白血病だな。
それとこれが小児喘息。恐らく慢性的なものだろう。」


北「親戚関係等は？」


藍「見当たらない。
あの子、きっと抱えてるものが大きすぎる。」




藍沢先生のあんな顔は
初めてに等しいほど見た事がなかった。

同情でも哀れみでも無い
例えるなら、怒りだ。

こんなにも小さな少女が何故苦しまなくてはならないのか

そんな怒りを感じた。






13歳。腕や身体に管をつけられ針を入れられ
よく分からぬ間に沢山の検査をされ
怖くて堪らないはずだ。泣き喚いてもおかしくない。


それなのに当時のAはベッドに横たわって
真っ直ぐと天井を見据えていたんだ。







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