〜猫参り��〜 ページ4
寒さでピリピリしているお津根を無視したニタは十兵衛の腕の中から空を見上げた
ニ「じきに降り出すかねぇ」
お津「……ニタ、私を無視するとはいい度胸じゃないかぇ(黒笑)」
ニ「Σご、ご勘弁をｯ」
十「^^;…お 来た来た」
「おいおい 手白
なまり節煮たから食ってけよ」
手「にゃ」
十「美味いか？」
手「にゃ」
その時 雪がひらり、またひらりと降り始めた
十「初雪か…」
雪が降り始めた江戸では子ども達が遊んでいた
神社の鐘がガラン ガランと大きく鳴り響いた
飯屋の店主が寝ている部屋の障子が開き冷たい風が吹き込む
店「手白？いってぇ何処に行っていたんだ
すっかり体が冷えてるじゃねぇかい」
手白はざりざりと店主の右目を舐め続けている
店「そら もういいから布団にお入り」
「お前がずっとなめていてくれたお蔭かね すっかり痛みが消えた…」
ゆっくり開けた店主の右目に映ったのは右目が潰れ痩せこけてしまった手白の姿だった
店「てっ手白!? 何てこった こんなに痩せちまって」
手白は店主に撫でられごろごろと喉を鳴らす
店「おまけに片目が……まさかお前」
手「にゃぁあぁん」
起き上がった店主を喜ぶように鳴いた手白はふり積もった雪を見てはしゃぐ子どものように外に躍り出た
店「手白ｯ」
手「にゃんっ」
手白は雪の上をぴょんぴょんと跳ね回る
手「にゃっ にゃん」
店「これ、どこに行く」
店主の声に手白はまるで鬼ごとで逃げるかのように外へ出ていく
手「にゃ にゃにゃん」
店「外は吹雪いているじゃないか 戻っておいで」
「外は寒いよ あったけぇ家に入ろう なぁ手白ｯ」
そのまま手白はどこかへと姿を晦まし、二度と戻ってはこなかった
空が明るくなり、十兵衛が飯屋の様子を見にやって来ると、店主は雪の中に座り込んでいた
十「そらよ、じいさん 風邪ひくぜ」
「毎日お宮さんに願掛けに行った手白が悲しむよ」
店「雪が」
店主は赤くなった手で雪をきしっと掴む
十「うん？」
店「ぜーんぶ隠してしめぇました」
「足跡を追おうにも全部消えっちまった…目が見えるようになったとて、家族が消えて喜ぶ奴がいるものですか」
「手白って奴ァ、そんな事も分からねぇ…バカな猫でございますよぅ」
涙が堪えきれず、泣いてしまった店主に十兵衛は声をかけることが出来なかった
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作者名：カピバラ | 作成日時：2019年3月23日 15時
