違和感 ページ38
御幸一也side
戻ってみたものの、そこに由奈はいなかった。さっきいた人達はいないが、竈門や光波達がいた。光波が何者なのか、由奈が何なのかまだよく分からねぇ。
が、だからって殺すのは違うだろ。
“お館様“とやらはずっと穏やかな笑みを浮かべている。
お館「ごめんね、わざわざ戻ってもらってしまって。」
嫌いなはずなのに、ふわふわする。
お館「君たちは、数週間とはいえ木村と過ごしてきた。何も知らない君たちにとっては、私達は敵だろう。」
なんだよ、急に。
お館「縁側に居ては、君たちを見下ろすことになってしまうからね。」
そう言って彼は縁側を下りた。
お館「でも、木村はそれだけ危険な存在なんだよ。」
片「それならば、私ども教師が更生させます。どうか『無理ですよ。』…!」
監督の言葉を光波が遮る。
『無理です。更生なんて。できるわけない。』
片「どういうことだ。」
光波は苛立たしげに溜息をつき、言った。
『何度も言っているでしょう。鬼だからですよ。』
片「冗談はよせ」
『私がこの場で冗談など言う人間だとお思いで?』
監督と光波が睨み合う。
『そんなに知りたければ、奴が起こした前科…全てお話しましょうか?
まず1つ目。隊士の給料を奪った。2つ目、自分の任務をほかの隊士に押し付け、その上報告書を偽装した。3つ目自分の命惜しさに、鬼に情報を売った。4つ目、自分の命惜しさに鬼に一般人を差し出した。5つ目、口封じのためある隊士1名を殺した。6つ目、人を殺すことに快楽を覚えた奴は、目に付いた隊士5名と任務先の一般人約15名を惨殺した。そして7つ目、鬼に堕ち100を超える人間を殺した。』
淡々と語っていく光波の目にハイライトが消えた。監督や俺たちを見回すその目に、温度はない。
『彼奴がたとえ人間であれど、人を100人を殺した者に、やり直す権利など与えられるとお思いで?』
光波の目は冷めきっている。その目で俺たちを見回すのだから、こちらは背筋が凍りそうだ。
正直ゾッとするその視線を受け、1人だけ皆と反応が違う奴がいた。
…鳴だ。
あいつはいつもの王様オーラなどなく、ただ悲しげに光波を見つめていた。
なんなんだよ。
思い返せば鳴は今日ずっと変だ。
鬼殺隊が現れてから一言も喋っていない。
ただずっと、何かを知っているかのような目をして、悲しそうにどこかを見つめるだけだった。
終わり←帰り道
107人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:空気 | 作成日時:2020年7月20日 14時