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「あっ、そっか」
ハッとする声を聞きながら、バイオリンをケースの上にそっと置き、キッチンに向かう。
「よさそうですね。あとはクリームをはさめば完成です」
「あ、ホントだ。綺麗に焼けてる」
冷蔵庫からクリームを二種類出し、絞り袋に詰めはじめる。
「すみませんが、生地が少し多めなので手伝っていただけませんか？」
「勿論！」
「ありがとうございます。どうぞ、使ってください」
ガナッシュの方を差し出し、一足先に生地を手にとり、バタークリームを絞り出す。
「生地の型作ったの私だけどさ、今考えると
少し面倒臭い形作ってんね……」
「でも、形が単調なよりは良いですよ。
食べるときに楽しいですし」
「後で写真撮ったら可愛いかもね。上手く出来てたら自慢しよ」
さっき言ってた彼氏さんにですか？
と、出ようとしていた質問を押し止めてごく普通の会話に徹する。
「じゃあ盛りつけにも気合い入りますね。
……ところで、少しお聞きしても宜しいですか？」
そこで、Aさんの方を向く。
「うん？」
キョトンと私を見てくる。
さっき留めようとしていた努力なんて放り投げた。
チェシャ猫みたいに自分の口角が上がる。
「……長い間ご友人だったとは聞きましたけど……彼氏さんとの馴れ初め、是非ともお聞かせ願えませんかね？」
彼女の顔が笑ったまま、ぴしーんと音が聞こえそうなくらい固まる。
「……へ？ ……え、……ん？ え！？ 何で！？」
「私の周りってことごとく恋愛経験のある人がいないんですよねー、なのでやはり現在進行形で恋人されてる方にご享受願いたいなーと」
「あ、えっと……れ、恋愛経験とか、そんなのないです……。別に普通だし……」
顔を真っ赤にさせたままもごもご言うAさんに詰め寄る。
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作者名：花言葉 | 作成日時：2019年1月15日 15時
