フロントの時間 ページ39
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律さんによると、内部は階段などの位置がバラバラに配置されたりしていて一筋縄ではいかなさそうで。
画面の中で彼女が指を弾いて、裏口のロックが解除された。
息を潜めて、全員で移動する。
正面に開けたロビーには、沢山の黒服達。
地図を見ると、非常階段は少し進んだ右側にあるらしい。
一気に行くには難しそうだ。
うーん……と考え込んでいると深紅のドレスが列を外れてロビーに向かっていく。
イリーナ先生……？
あんな堂々と行くなんて怪しまれるに……
目線の先を見て、瞬間的に勘づいた。
まさか、イリーナ先生……！
ロビーの奥にあるピアノまで、酔ったフリをして近づく彼女。
艶めいた声は私達にまでよく届く。
「そ。私のことよく審査して……ダメな所が
あったら叱ってください」
そう言って、鍵盤に指を走らせた。
ロビーにいた黒服の人達から、少なからず私達からも、感嘆の息がもれる。
幻想即興曲。
奏でるイリーナ先生の目線から、吐息から、揺れ動く髪から、色香が溢れだしている。
私も一度弾いたのを見たことはあったが、やはり実践となると色気がその比ではない。
皆、腕前に聞き惚れていた。
烏間先生の仕草に従い、無事ロビーを突破。
「流石ですね、イリーナ先生」
「香澄は知ってたの？ ビッチ先生がピアノ弾けるの」
カエデさんの問いに、バイオリンでセッションしたことがあるんですと答えた。
烏間先生の、普段の彼女から甘く見るな、という言葉を噛みしめながら、階段を登った。
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作者名：花言葉 | 作成日時：2019年1月15日 15時
