崖登りの時間 ページ37
─
その少し後、私達がいた場所は。
「高っっっっっっかい…………」
私含め呆然と見上げる皆さんに律さんの声。
「ホテルのコンピュータに侵入して、内部の図面を入手しました。警備の配置図も」
「正面玄関と敷地一体には大量の警備がおかれています。
フロントを通らずホテルに入るのは、まず不可能」
「ただ一つ、この崖を登ったところに通用口が一つあります。
まず侵入不可能な地形ゆえ、警備も配置されていないようです」
携帯がピロンとメールを受信する。
同様に送られた内部図面を見ていると、殺せんせーが言い渡した。
「敵の意のままになりたくないのなら、方法は一つ。
患者10人と看病に置いてきた2人を除き、動ける生徒全員でここから侵入し、
最上階を奇襲して治療薬を奪い取る！」
…………
「それは、ちょっと難しいだろ……」
誰かが発した言葉。
スマホをジャケットにしっかり仕舞い込み。
軽く助走をつけて地面を蹴る。
上手く出っぱっている岩を掴んで、壁面でも片手で静止できた。
ほんの少しの高みから皆さんを見下ろすと、フウと溜め息をついた赤羽さんを筆頭に次々と崖を登っていく。
「いや、まあ……」
「崖だけなら楽勝だけどさ？」
足場にスックと直立した磯貝さんが言う。
「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから。
烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ」
その言葉を聞いた烏間先生が、一旦俯き、
「注目！ 目標、山頂ホテル最上階！！
隠密潜入から奇襲への連続ミッション！！
ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う！
いつもと違うのは
三分でマップを叩き込め！
全員にしっかりと届く、迷いのない声を。
「「「「「「「おう！！」」」」」」」
岩壁をつかみながら、お腹から声を出して応えた。
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作者名：花言葉 | 作成日時：2019年1月15日 15時
