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「なにがあった?」
「はあ、それが…」谷山さんが答えようとしたとき、私に覆い被さっていた男の人が身を起こした。
「怪我は?」
黒ずくめの男性が声をかけると、肯定とも否定ともとれないくぐもった声が聞こえた。
男の人の前髪から血が滴る。
「あの、すみません!あたし、びっくりして」
谷山さんが手を伸ばす…それを黒ずくめの男性が制した。
「少し切ったな…他は?」
「大丈夫です」
男の人は更に起きあがろうと足に体重をかけ、少し顔を歪めた。
「立てるか?足は?」
「…なんでもありません」
男の人が立ち上がり、私も体を起こす。
「本当にごめんなさい。急に声をかけられたもんでびっくりしちゃって…」
「言い訳はいい」
黒ずくめの男性が冷ややかに言う。そして谷山さんを見てから「昨日会った子だな」と言った。
どうやら知り合いらしい二人を横目に、私は痛む手首を押さえ、立ち上がる。
『あの、本当にすみませんでした。私をかばって……』
こちらを見つめる男の人の目はとんでもなく冷たい。
当然だろう、私がいなければ彼は怪我をしなかったのだから。
『校門を出て角を曲がったすぐの所に病院があります。悪化しないうちに向かいましょう』
「すぐに行こう、そっちから支えてくれ」
言いながら、男性は男の人に肩を貸す。
慌てた様子で谷山さんが反対の腕に手をかけたのだが、男の人は振り払い「結構です」と言った。
にべもなく断られてしまった谷山さんは不服そうな顔をした。
「リン、歩けるか?」
「大丈夫です」
声に頷いてから、黒ずくめの男性はこちらを見据えた。
「二人とも、名前は?」
「谷山……ですけど」
『夜月です』
「では夜月さん、病院まで案内していただけますか?谷山さん、この場は大丈夫なようですので、どうぞ教室へ」
「でも」
『谷山さん、私手首を痛めたようなので病院でお世話になってから学校に行きますと先生に伝えていただけますか?それと、さっきチャイムが鳴りましたよ』
「えっ嘘!?」
私がそう言うと、谷山さんは全速力で走り、旧校舎を後にした。
『向かいましょうか』
私は二人に向き直り、病院に向かって歩き出した。
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作者名:あんみつ x他1人 | 作成日時:2023年3月13日 18時