12月12日 ― 恋堕好日 ― (ページ29)

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■07. ページ29

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「あーっ！もーっ！」

急に二宮くんが立ち止まる。
ビックリして私も一緒に立ち止まると、空いていた左手でクシャっと、自身の前髪を掴んだ。
「頼むから、んな顔、しないでよ」
「ご、ごめんね」
思わず謝る、と、ギュ、とつながっていた手を強く強く、握られた。
「あーくそ！あの人、なんであんなこと・・・ちょっと、こっち来て」
え？と思ってる間もなく、グイと手を引かれ、私たちは駅、じゃなく、駅まではほど遠い、学校近くの公園に入った。

「ここで、ちょっと待ってて」
ベンチに私だけ座らせると、二宮くんは少し離れた自販機に走って行って、2本、缶を手にして戻ってきた。
はい、と私に差し出されたのは、大好きなホットカフェオレ。
ありがと、と両手でその温かい缶を包むと、少しだけ心もあたたまった気がした。

冬の昼下がり
日差しはあるのに、肌がやけに冷たい。

「A、さぁ？」
ビクン、と急に呼ばれた名前に、思ったより肩が揺れる。
すると、はぁ・・・と深いため息が隣から零れた。
更に私はそれに、シュン、となる。

大好きな人の声なのに、その先が聞きたくなくて。
その先には、悪い言葉しか、ないような気がして・・・

「不安にさせて、ごめん」

でも
続いて出てきたそれは、想像していたものとは全然違って、少し顔を上げてみると、今度は逆に、二宮くんが隣で頭をたれていた。

「俺、必死になると、色々物事、見えなくなるみたいでさ？Aに・・・こんな顔させてるって気がつかなかった」
顔を上げた二宮くんが、私の顔を覗き込む。
「俺、年下じゃん？背もちっこいし、Aと釣り合わねーよなって、いっつも思ってて・・・」
「そんな！」
「あほらしい？(笑) けど、結構真剣に悩んでんのよ、俺。やっと・・・Aより背もデカくなってきて？並んで歩いても、まぁまぁ見れるかな・・・なんてさ？」
そう言いながら、私の手を取る。

目の前の人は、何を言い出すんだろう？

「だいたい俺、Aって名前で呼ぶのに何ヶ月かかったと思ってんの？・・・Aに嫌われないように、色々必死なわけ、これでも」

そんな

そんなの

そんなこと
全然ないよ

二宮くんが二宮くんでいてくれるかぎり
そんなこと・・・
「そんなこと、って思う？」
思わずコクリと首を縦に振ると、フフッと苦笑いされた。

「・・・ばっかみたい」

やっと吐き出された私の言葉に、かもね？って二宮くんは柔らかい笑みをこぼした。