12月12日 ― 恋堕好日 ― (ページ19)

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□07. ページ19

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二度と顔も見たくない、そう言われて

さらにはワインまでぶっかけられて

ホッとしてる自分を心の中で笑ってたまでは良かった

けど、壁に当たったスマホのディスプレイが消えた瞬間

さすがに血の気が引いた

俺やメンバーの部屋は、他の客室からは行けないつくりで

一度ロビーに降りて、専用のエレベーターに乗らなきゃいけないし

この時間じゃまだロビーも混雑してるはずで

こんな目立つカッコってのは、あまりよろしくない

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だから隣で眠るこの子は、大げさに言うなら恩人だ

カラダの相性がいい恩人なんて、ぶっ飛んでんなって

ちょっと可笑しくなるけど

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最初は、ホントにちょっとからかうつもりだった

だって、クルクル変わる表情が面白くて…いや、多分可愛くて

もっと見たいって、単純に興味を持った

なのに、押し倒して見下ろした顔の

不安と哀しみに揺れる表情の色っぽさに

泣き出しそうな瞳に

不覚にも持ってかれたのは俺の方で

どうしてもキスしたくなって

抵抗されないのを良いことに、奪った唇にすぐに夢中になった

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寝そべったまま、片肘をついて

小さな寝息と一緒に上下する背中を眺める

「ん……」

小さく声を漏らして、それからコロンと寝返ったら

艶のある髪が俺の胸元を擽った

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枕元の時計は、もう夜中をとっくに過ぎてて

今ごろならもうロビーに降りても人は少ないだろう

なのに、何となく離れ難いのは

きっとこのシーツの中の温もりのせいだけじゃない

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そっとベッドを抜け出して

グラスに少しだけ残っていたシャンパンを飲んだ

それは喉を潤すには少なすぎたし

温くなってて決して美味くはなかったけど

…悪くない

この部屋にずっと漂ってる、少し寂しい空気感とか

小さな寝息を立てる『A』って名前とカラダしか知らない女の子とか

それが何故だか、不思議と居心地がよかったんだ

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テーブルに置かれた俺とは違う機種のスマホを手に取った

この子は、俺の仕掛ける悪戯に気が付くだろうか

もう一度、声が聴けるかな

…この子の顔を見て「A」って呼ぶことは出来るかな

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何となく、ホントに何となくだけど

思い描いてるとおりになる気がして

操作したスマホをテーブルに戻したら

まだ少し湿ったシャツを着て

Aを起こさないようにそっと部屋を出た