□01.往恋来恋×ルカ×リアル ページ13
・
「やだ…何していいかわかんないや」
想像してたよりずっと広い部屋
見るからに高級なソファは
庶民の私にはひどく座り心地が悪い
大人３人は寝れそうなベッドに
たった一人で眠るのかと思うと、それだけで気が滅入る
・
いわゆる一流と言われるホテルの高層階から
見渡せる景色は確かにキレイだけど
こんなの一人で見たって仕方ないって
どうして来る前に気が付かなかったんだろう
・
傷心旅行なんて、もっとひっそりと寂しいところに行くべきだった
例えば秘境みたいな温泉とか
そんなことを考えてたら
２時間ドラマのサスペンスなんかによく出てくる
断崖絶壁に立ってる自分の画が浮かんで
余計に気が滅入った
「ダメだ…シャワーでも浴びよ」
・
５年も付き合ったのに、別れるのは恐ろしく簡単だった
いったい何が決め手になったのかなんてわからないほど、
些細な食い違いやストレスは、多分お互い数えきれないほどあった
仕事の忙しさにかまけて、解決してこなかったそれらの事が
積もり積もって、キャパオーバーしただけの事
頭ではそうわかってても
結局こんなにもトンチンカンな傷心旅行を
大真面目に計画した私は
多分、それなりに傷ついてるのかもしれない
・
熱いシャワーを浴びて、体中の隅々までいい匂いに包まれたら
やっと少しだけ気分がマシになった
・
今日はもう酔っ払って寝ちゃおう、そう決めて
ちょっとだけドキドキしながらルームサービスで
シャンパンとフルーツをお願いした
・
・
華奢なグラスに注いだ黄金色の液体は
程よく冷えていて喉をスッと通り抜けていく
注いでくれる人がいないことには目をつぶって
空になったグラスに２杯目を注ぐ
鼻を抜けるいい香りに、またちょっと気分がよくなって
器にキレイに盛られたフルーツの中から
イチゴをつまんで口に入れた時
ドンッ！！
こんなホテルに似つかわしくない鈍い音が
どこかで聞こえて
それからすぐに聞こえた２度目の音に
持ち上げかけたグラスをテーブルに戻した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 556人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：１２(とうふ)の角(かど)に頭ぶつけ隊
x他3人 | 作成日時：2013年12月3日 12時
