Tear [登坂広臣] (ページ43)

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episode.41・Hiroomi.Tosaka ページ43

そろそろいい時間になって来て、

Aさんもどんだけ飲んだか全くわからない───ジョッキもいつの間にか回収されてた────くらい飲んでやっと酔ってきたのがはっきりわかり始めた。

「そろそろ帰りますか。」

相手から言われるより自分から言った方がなんかダメージ少ない気がしたから

反抗する自分の気持ちを押さえつけて話しかければ

えぇぇってかなり嫌がったような表情を見せた。

“もうですか？”って言葉をあとから付けて。

「もういい時間だし。Aさんも仕事あるでしょ明日。」

「それもそうですね…。今日はありがとうございました。」

「いいえ。パーティーのエスコート、楽しみにしてる。」

また会えるの楽しみにしてるって意味だったんだけど、

“エスコートが楽しみってなんですか”なんつって笑ってるあたりわかってない。

うん。全く。

Aさんと隣で歩いて車に向かう。

春の冷たい風が頬に当たって酒の回った体を包む。

「今度、お花見してみたいですね。」

「した事ねぇの？」

不意に呟いたAさんに驚いて聞けば、“1人で桜並木を散歩したことはあります。”って。

“じゃあ今度一緒に行こ。”って言ったけど返事は返ってこないくて

代わりに、足元が狂ったAさんが倒れ込んできた。