Tear [登坂広臣] (ページ35)

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episode.33・Hiroomi.Tosaka ページ35

車で指定されたマンションに着けば、

もう外で待ってたAさん。

寒かったはずなのに。

気になってた私服は、普通に若者って感じ。

フェミニンな服装で、静かで可愛い。

全然大好き……ってかもろタイプ。

流石に初めてなわけだから車から降りてAさんの方に向かえば、携帯に向いてた視線が俺を捉えた。

その途端目を細めて、小さく手を挙げたAさん。

こっちに近付きながら登坂さん！って言ってる。

気付いてるって。

「お久しぶりです。今日はどこへ連れてっていただけるんですか？」

ﾆｺﾆｺと微笑みながら俺の横で歩いて聞いてくる。

俺は、Aさんに歩幅を合わせながらどう答えるか迷ってた。

内緒にする？

いや、でも居酒屋だし。秘密にするのもどうなの？

ってことで、直人さんとか隆二とか健ちゃんと行った所って説明した。

ちなみに、全員一致でお気に入りって。

「え、そんな所行ってもいいんですか？あ、お金足りますかね。どうしよう、凄く楽しみです！」

隣でﾜｸﾜｸはしゃいでるAさん。ちょっと待って。

金？金の話した？

「いや、払わせねぇし。どう考えてもそれ俺の役目。とらないで。」

「とっ…って。払いますよ！私のわがままなんですから！逆に払わせません！」

「俺のわがまま。Aさんと食事に行きたかったのは俺。」

その後、“それは！……”って反論しようとしたけど会話は繋がらず。

どうせなら、私も行きたかったみたいな返答をほんの少し期待してたんだけどな。